研究課題/領域番号 |
25463098
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
恩田 健志 東京歯科大学, 歯学部, 講師 (30433949)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 口腔扁平上皮癌 / 分子標的治療 / 免疫療法 / プロテオミクス / メタボローム / HSP90 / PDE5 |
研究実績の概要 |
近年、多階層オミクス情報を高精度かつ網羅的に取得可能となっている。本研究の目的は、口腔扁平上皮癌細胞のマイクロアレイ解析、プロテオミクス解析、メタボローム解析から、癌細胞が発現異常を示すmRNA、タンパク質、代謝産物各々の情報を階層縦断的に統合し、診断や治療標的となり得るバイオマーカーやネットワーク・パスウエイの同定を試み、リストアップした発現異常分子について腫瘍マーカーとしての有用性、妥当性を検証するとともに、動物モデルを用いた臨床前試験を行い、薬剤の安全性と有効性のデータを収集し、新規分子標的治療薬として臨床試験への発展を試みるものである。初年度の実験においては、HSP90を口腔扁平上皮癌細胞の増殖、生存に関与する多くのクライアントタンパク質の機能維持と安定性を調節するターゲットとして抽出した。本年度は口腔扁平上皮癌細胞群が大きく変動を示す分子群として、phosphodiesterase (PDE)シグナル伝達に関与する分子をリストアップした。PDE高発現細胞株HSC3にPDE5阻害剤であるシルデナフィルクエン酸塩を投与し、抗腫瘍効果を検討したところ、非投与群と比較して投与群の生細胞数の低下、細胞増殖抑制、浸潤能抑制などの抗腫瘍効果が認められた。HSP90とPDE5の阻害による口腔扁平上皮癌細胞の抗腫瘍効果をIn vivoで検証する為に、HSP90高発現株KONとPDE5高発現株HSC3をヌードマウスに移植し、担癌マウスモデルを作成した。HSP90は阻害薬が存在するが副作用が比較的強いため既存の阻害薬を用いず、HSP90モノクローナル抗体を用いた。PDE5は阻害剤が存在し、男性機能障害、肺高血圧症への適応承認済みの薬剤であり安全性の確立されたドラッグリポジショニング的な性格を有する薬剤で、同薬剤を阻害実験に用いた。それぞれ、投与方法、容量の最適条件を検討し、確定させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、口腔扁平上皮癌細胞のいわゆるオミクス解析でリストアップした癌細胞が高発現を示すHSP90とPDE5に着目し、その阻害によりIn vitroで口腔扁平上皮癌細胞の抗腫瘍効果があることを見出した。さらに口腔扁平上皮癌細胞における抗腫瘍効果をIn vivoで検証する為に、HSP90高発現株KONとPDE5高発現株HSC3をヌードマウスに移植し、担癌マウスモデルを作成した。本移植実験に対する口腔癌細胞の生着率が安定せず、移植細胞数や移植部位などの条件設定に時間を要した。HSP90は阻害薬が存在するが副作用が比較的強いため既存の阻害薬を用いず、HSP90モノクローナル抗体を用いた。PDE5は阻害剤が存在し、男性機能障害、肺高血圧症への適応承認済みの薬剤であり安全性の確立されたドラッグリポジショニング的な性格を有する薬剤で、同薬剤を阻害実験に用いた。このPDE5阻害剤であるシルデナフィルクエン酸塩(Sildenafil Citrate)は研究用に通常の手続きで購入することが困難で入手するのに時間を要したことから、阻害実験に遅れを生じた。現在、薬剤の投与方法、投与容量の最適条件を検討し、確定させたところである。平成26年度にIn vivoでのHSP90とPDE5の阻害による口腔扁平上皮癌細胞への抗腫瘍効果の検討が終了する予定であったが、上記理由により、担癌マウスモデルの作成と薬剤投与による抗腫瘍効果の検討における最適条件の設定が終了した段階である。今後、本条件下に作成した担癌マウスモデルを用いて経時的に抗腫瘍効果を判定する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は担癌マウスモデルの作成と薬剤投与による抗腫瘍効果の検討における最適条件の設定が終了した。今後は、設定した本条件下に作成した担癌マウスモデルを用いて経時的に抗腫瘍効果を判定する予定である。また、HSP90阻害剤とPDE5阻害剤が、既存の頭頸部癌に適用のある5-FU、S1やCDDP、セツキシマブと比較してより優れているか、または、それら既存薬剤の増強効果の有無などについて、作成した担癌マウスモデルを用いて検討する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
HSP90とPDE5の阻害による口腔扁平上皮癌細胞に対する抗腫瘍効果をIn vivoで検証する為に、HSP90高発現株KONとPDE5高発現株HSC3をヌードマウスに移植し、担癌マウスモデルを作成した。本移植実験に対する口腔癌細胞の生着率が安定せず、移植細胞数や移植部位などの条件設定に時間を要した。また、PDE5阻害剤であるシルデナフィルクエン酸塩は研究用に通常の手続きで購入することが困難で入手するのに時間を要したことから、阻害実験に遅れを生じた。上記理由により、担癌マウスモデルの作成と薬剤投与による抗腫瘍効果の検討における最適条件の設定が終了した段階である。本条件下に作成した担癌マウスモデルを用いて経時的に抗腫瘍効果を判定する動物実験が遅れていることにより次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成26年度は担癌マウスモデルの作成と薬剤投与による抗腫瘍効果の検討における最適条件の設定が終了した。今後は、設定した本条件下に作成した担癌マウスモデルを用いて経時的に抗腫瘍効果を判定する予定である。また、HSP90阻害剤とPDE5阻害剤が、既存の頭頸部癌に適用のある5-FU、S1やCDDP、セツキシマブと比較してより優れているか、または、それら既存薬剤の増強効果の有無などについて、作成した担癌マウスモデルを用いて検討する予定である。薬剤の購入、培養関連試薬、マウスの飼育費などの消耗品として使用する予定である。
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