研究課題
本研究は、口腔扁平上皮癌細胞が発現異常を示すmRNA、タンパク質、代謝産物各々の情報を階層縦断的に統合し、診断や治療標的となり得るバイオマーカーやネットワーク・パスウェイの同定を試み、腫瘍マーカーとしての有用性、妥当性を検証するとともに、動物モデルを用いた臨床前試験を行い、新規分子分子標的治療薬として臨床試験への発展を試みるものである。初年度、次年度の研究成果として、HSP90とPDE5が口腔扁平上皮癌細胞に共通して高発現を示し、In vitroの各種解析から口腔扁平上皮癌の分子標的治療のターゲットとなり得る可能性を示唆してきた。本年度は、HSP90高発現株KONとPDE5高発現株HSC3をヌードマウスの背部皮下に移植して、担癌マウスモデルを作成し、In vivoでの検証実験を行った。KON移植マウスに、生理食塩水投与群、HSP90阻害剤17-AAG投与群、HSP90モノクローナル抗体投与群の3群を設定し解析を行った結果、HSP90阻害群に抗腫瘍効果があることが確認された。また、HSC3移植マウスには、生理食塩水投与群、PDE5阻害剤シルデナフィルクエン酸塩投与群を設定し解析を行ったところ、PDE5阻害群に抗腫瘍効果が認められた。HSP90阻害剤は、細胞周期、細胞分裂、アポトーシス、ストレス耐性等HSP90に関わる複数のクライアントタンパク質を同時に阻害し癌細胞を抑制できる利点がある。本研究の結果、HSP90阻害剤投与による口腔扁平上皮癌細胞に対する抗腫瘍効果が認められ、HSP90は口腔扁平上皮癌の治療標的となり得る可能性が示唆された。シルデナフィルクエン酸塩は男性機能障害、肺高血圧症への適応承認済みの薬剤でありドラッグリポジショニング的な性格を有する薬剤で、早期に臨床応用が可能と考えられる。本研究の結果、PDE5も口腔扁平上皮癌の治療標的となり得る可能性が示唆された。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 図書 (4件)
Journal of Oral and Maxillofacial Surgery, Medicine, and Pathology
巻: 28 ページ: 26-29
http://doi.org/10.1016/j.ajoms.2015.02.007
日本口腔腫瘍学会誌
巻: 27 ページ: 81-86
http://doi.org/10.5843/jsot.27.81