研究概要 |
本研究課題では, 口腔扁平上皮癌において重篤な副作用の報告がなく癌抑制遺伝子のDNAメチル化阻害作用をもつエピガロカテキンガレート(EGCG)が抗腫瘍因子BRAKの遺伝子発現を回復させ腫瘍進展抑制効果を示すという分子機構を解明するために,以下の実験計画に基づき実験を遂行する。 平成25年度は,口腔扁平上皮癌細胞 (HNSCC) におけるBRAK遺伝子の発現低下とDNAのメチル化の関係性を詳細に検討し, 平成26年度以降に実施するEGCGによるBRAK遺伝子発現回復作用および腫瘍進展への影響の検討で使用するBRAK遺伝子がメチル化されたHNSCC細胞を選択するために実施した。初めに,種々のHNSCCにおけるBRAK遺伝子のメチル化を測定するために,歯肉,舌および口腔底由来の種々のHNSCCを培養後に, DNAを回収し, メチル化特異的PCR法を用いてBRAK遺伝子のメチル化を測定した。その結果,BRAK遺伝子の発現がメチル化により顕著に抑制されているHNSCCを確認し(mBRAK-HNSCC),以降の実験に用いることにした。 また,強力なメチル化阻害剤であるデシタビン(DAC) を用いて,mBRAK-HNSCCにおけるBRAK遺伝子の発現回復作用を検討したところ,BRAK遺伝子の発現回復が確認された。さらに,mBRAK-HNSCCをヌードマウス背部皮下に移植し,in vivoにおけるDACのBRAK遺伝子発現および腫瘍増殖への影響を検討したところ,DAC投与により,BRAK遺伝子の発現回復に伴い腫瘍増殖抑制作用が認められた。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は前年度の実験25-1でBRAK遺伝子のメチル化が確認されたHNSCC(mBRAK-HNSCC)を用いて,EGCG処理によるBRAK遺伝子の発現回復作用と発現回復機序を検討し,平成27年度に実施予定のin vivo におけるEGCGの腫瘍進展抑制メカニズムを検討する上での基礎的なデータの検討を実施する。初めに,HNSCCにおけるEGCG処理によるBRAK発現回復作用を検討するために,BRAK遺伝子のメチル化による発現抑制が確認されたmBRAK-HNSCCを播種し, EGCGを24-72時間処理後にBRAKの遺伝子発現をRT-PCR法を用いて検討する。また, タンパク質レベルでの検討として細胞内外のBRAKタンパク質についてELISA法を用いて検討する。また, EGCG処理によりBRAKの発現回復が奏功しない場合は, 同様にメチル化阻害作用が報告されている天然成分であるゲニステイン, レスベラトール,クルクミンを用いて,以降の実験を行う。 次に,EGCG処理によるBRAK遺伝子発現回復メカニズムを検討するために,EGCG処理によりBRAK遺伝子の発現が確認されたmBRAK-HNSCCを培養後に細胞を回収し, DNMT1, 3a, 3bの遺伝子発現およびタンパク質レベルをRT-PCR法およびWestern Blot 法を用いて測定する。さらに, HNSCC細胞のBRAK遺伝子のメチル化レベルをメチル化特異的PCR法にて検討し,EGCGがBRAK遺伝子のメチル化を回復することを確認する。
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