本研究の目的は、造影高周波超音波画像を用いて、口腔内角化性病変と癌との識別を非侵襲的にリアルタイムで行う新たな診断システムを開発することである。これまでの研究の結果、角化性病変が広範である場合の表在性癌の初期段階においては、超音波画像解析で腫瘍の全体の特徴を捉えることは困難と考えられた。そこで、表在癌における血管構造の特徴を広い面積において解析できる手法としてICG封入リポソームを作製し、これを造影剤として蛍光実態顕微鏡を用いて解析する方法を検討した。これまでの検討においては、皮下の毛細血管の血流の解析も可能であった。またこの手法は、腫瘍血管でみられるEPR効果の検出に有効かと思われた。しかし、この方法は、腫瘍表層の二次元的な領域を検討する方法としては有効ではあるが、腫瘍の表層のみの解析に解析範囲が限られ、腫瘍の深達度を把握することは困難であった。平成27年度においては、腫瘍性病変における血管新生に関して、造影超音波画像と血管内皮を検出するための抗CD31抗体、および血管平滑筋を検出するための抗αSMA抗体を用いた免疫染色標本を用いて検討した。その結果、腫瘍形成の初期段階においては、CD31染色陽性の腫瘍新生血管が確認できるもののCD31陽性αSMA陰性の未熟な血管が多く認められ、このような領域の血管は、血液循環系にまだ連結していないと考えられ、造影超音波画像では、造影欠損領域あるいは造影剤漏出部位として描出される可能性が考えられ、ICG封入リポソームを用いて蛍光実態顕微鏡法においても病態描出の可能性が考えられた。以上より、造影超音波画像診断法やICG封入リポソームを用いた蛍光画像解析の検査法を組み合わせることにより、腫瘍の初期病巣の範囲や深さをより精確に捉えることが可能であることが示唆された。
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