研究課題
【検体収集】保有の検体および検体の収集・遺伝子発現解析の実施について、所属機関の遺伝子倫理委員会の審査をうけ、承認を得た。現在保有するRNA検体に加えて、新たな口腔扁平上皮癌(OSCC)の切除検体の収集を進めた。それらすべての検体の臨床経過を検討し、マイクロアレイの分析およびPCR解析に使用する症例を抽出した。それらのtotalRNAの抽出を行った。【マイクロアレイ網羅的遺伝子発現解析の検体の選定】平成25年度は遠隔転移をきたした5症例と4つ以上の頚部リンパ節転移をきたしたが遠隔転移をきたさなかった5症例を予備的に解析することとして、それらを解析受託会社に送付し、現在解析の進行中である。同時に、全保有検体400余において、分析に使用できる症例を再吟味し、平成26年度中に遠隔転移をきたした追加の5症例(可能であればさらに多く)を同じマイクロアレイ解析し、再度同様の解析を実施する準備を進めている。【マイクロアレイ解析の詳細】Agilent Expression Array : SurePrint G3 Human GE 8x60K Microarray 蛍光標識方法:1色法; テスト群=遠隔転移陽性 口腔扁平上皮癌組織 5検体; コントロール群 =遠隔転移陰性 口腔扁平上皮癌組織 5検体【口腔扁平上皮癌患者の血液採取】遠隔転移性バイオマーカー候補分子の血液中検出を目的にOSCCの20症例で術前、術後の血液を採血収集・保存した(将来的に分析を計画)。
2: おおむね順調に進展している
当初の予定では局所再発なしでリンパ節転移とともに遠隔転移をきたした10症例とリンパ節転移のみを生じた10症例をマイクロアレイで発現解析し、遠隔転移に関連した発現様相を捕捉する予定としたが、平成25年度は遠隔転移5症例とリンパ節転移多発のみの症例5例を分析に進めるにとどめている。これは、局所再発と遠隔転移を伴う症例、あるいはを多発リンパ節転移を伴う遠隔転移症例が多くをしめる一方で、局所再発とリンパ節転移を伴わない遠隔転移が少数であるが存在しており、これらすべての臨床経過の違いを慎重に整理したうえで、分析症例を決定する方針とした。口腔の扁平上皮癌には唾液腺由来のものが高悪性症例として混在することが仮説として定期されており、臨床症状あるいは組織所見の整理をもとにした症例の慎重な選定は、最終的な研究結果に非常に重要な意義と影響を有する。したがって、現時点では症例が最もまとまっている、局所再発を伴わないリンパ節多発転移を伴う遠隔転移症例を平成25年度内の分析症例として分析を開始した状況にあり、今後は残りの症例の中から、経過において共通点を有する症例を厳選していく段階にある。
【マイクロアレイ解析】平成25年度中に分析を開始した10症例(遠隔転移症例と対照症例を含む)について、マイクロアレイによる発現解析のデータのフィルタリングで得られた有効プローブデータに対して、t検定によりp-valueを算出し、得られたp-valueから統計学的多重性を考慮しq-valueを算出(Benjamini-Hochberg法)し、2群間のシグナル平均値の有意差を検定することから分析を開始する。それによりOSCCが遠隔転移をきたす際に特有の分子発現プロファイルの特徴をしめす遺伝子発現を試験的に探索する。今後平成26年度中に分析を開始する予定の遠隔転移症例5症例(もしくはそれ以上)および対照症例5症例については、前述の平成25年度に分析を開始した10症例と同様の分析を独立して行い、両社の結果を比較し、相動性を確認する。【リアルタイムPCR解析】マイクロアレイ解析で得られた遠隔転移に関連が示唆された遺伝子について、症例数を増加してリアルタイムPCRによる発現解析を行い、結果の検証を行う。【検体収集】癌組織検体および血液検体の収集を継続して行う。新たな遠隔転移症例については経過を十分吟味するために、全般について臨床経過や病理所見などの資料の正確な記録及び保全を行う。
前述の研究達成度の項目で記載したごとく、委託分析を行うことになる部分の分析が平成25年度中に完了しておらず、請求が次年度に繰り越すことになった。同時に研究の基本的な仮説形成において再検討を要する事象が生じたために平成26年度に追加の分析が開始される予定になっており、結果として20症例ていどのマイクロアレイ発現解析の委託費用が平成25年度中に未請求であることによる。前述のごとくマイクロアレイ解析に対する請求が最終的になされることにより平成25年と使用予定額の請求がなされることになる予定である。
すべて 2013
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
BMC Cancer
巻: 13(1) ページ: 410-410
10.1186/1471-2407-13-410