研究実績の概要 |
これまで我々はGFPを発現する口腔扁平上皮癌(OSCC)細胞GSASを用いたin vivo selectionにより高転移株GSAS/N3, GSAS/N5を樹立し, 浸潤能・転移能に恒常的なNF-κBが関与していることを確認した。今回我々はEPAと関連するNF-κBの恒常的な活性の要因の一つにTNFレセプター(TNF-R)を介したTNF-αのオートクライン機構を検討した。高転移株GSAS/N3, GSAS/N5と親株GSASの培養細胞上清のTNF-αの産生をELISAで検討した。さらにNF-κB の上流の分子であるPI(3)K、P-Akt, P-Ikkα, P-Ikkβの発現をウエスタンブロット法で確認した。さらにTNF-αを抑制した状態でGSAS/N5をマウスに移植し, EPAの投与下, 非投与下ですることで腫瘍の大きさや転移能を検討した。 In vitro でのTNF-α, TNF-R1は, 親株GSASと比較して高転移株GSAS/N3, GSAS/N5は発現が高く, TNF-R2の発現に変化はなかった。 NF-κB の上流の分子であるPI(3)K, P-Akt, P-Ikkα, P-Ikkβの発現は, タンパクレベルで高転移株GSAS/N3, GSAS/N5での発現上昇を認めた。また NBD peptideの投与でNF-κB の活性が阻害されTNF-α 産生量が抑制されるとP-Akt, P-Ikkαの発現の低下を認めた。最後にTNF-αの産生を抑制することでGSAS/N5を移植したマウスの舌は腫瘍の縮小や転移能の低下を認めた。NF-κBの活性上昇は, OSCCの転移において重要な役割を果たしており, TNF-R1を介したTNF-αを阻害することはOSCC に対する有効な治療法になる可能性が示唆された。
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