研究課題/領域番号 |
25463116
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
光藤 健司 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (70303641)
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研究分担者 |
小栗 千里 横浜市立大学, 医学部, 助教 (30400394)
藤内 祝 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50172127)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 口腔癌 / 温熱療法 / 磁性抗癌剤 / アポトーシス / 電子顕微鏡 |
研究概要 |
近年、口腔領域の多発癌や重複癌は増加しつつある。その原因としては、患者の高齢化、口腔癌治癒率の向上、食生活や環境因子での多種の発癌物質への曝露などが挙げられる。口腔癌の重複癌は上部消化管や肺が多いことから、重複癌の制御は口腔癌の治療後の予後を左右するとも考えられる。この中で我々は癌温熱療法に着目した。温熱療法は癌に対して抗腫瘍効果を有するが、全身の免疫機能を賦活化するとも言われている。本研究では単剤で抗腫瘍効果、温熱効果を有する磁性抗癌剤(以下磁性体)が腫瘍の原発に対する温熱療法のみならず直接加温されていない転移性癌あるいは重複癌に対しても免疫賦活によって抗腫瘍効果を有する新たな温熱免疫化学療法の開発を目的とした。我々が開発した本磁性体は様々な細胞株において細胞傷害性があることをMTTアッセイで示したが、その作用機序は明らかににされていない。平成25年度は磁性体が細胞に取り込まれることを確認し、今後の作用機序を解明するための実験を行った。また本磁性体が及ぼす癌細胞の細胞周期を解明し、細胞傷害性のメカニズムと動物実験での投与方法を確立する。細胞への取り込みは、ヒト由来平上皮癌細胞株に磁性体を投与し電子顕微鏡を用いて確認を行った。磁性体は細胞内に取り込まれることが確認でき、作用機序として細胞内で抗腫瘍効果が発揮されることが判明した。また、アポトーシスと細胞周期をフローサイトメトリーにて検討した。その結果、磁性体は濃度依存的にアポトーシスを増加させた。よって、磁性体はアポトーシスを誘導することから抗癌活性の作用として有用であった。しかし、細胞周期に関して、磁性体投与なしのコントロール群と磁性体投与群では大きな変化を認めなかった。今回、磁性体の作用機序が一部解明されたことは26年度からの実験において非常に意義のあるものであると考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本磁性体が様々な細胞株において細胞傷害性があることは、MTTアッセイで示された。しかし、磁性体の抗癌作用の作用機序は明らかににされていない部分が多い。そのため磁性体が細胞に取り込まれることを確認するために横浜市立大学福浦キャンパスに設置してあるH-7500 transmission electron microscope (Hitachi, Tokyo, Japan)で確認を行ったところ、磁性体は細胞内に取り込まれることが確認できたことから作用機序として細胞内で抗腫瘍効果が発揮されることが判明した。また、アポトーシスと細胞周期をフローサイトメトリーにて検討したところ、磁性体は濃度依存的にアポトーシスを増加させた。しかし、細胞周期に関しては磁性体投与群とコントロール群(磁性体投与なし)では大きな変化を認めなかった。
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今後の研究の推進方策 |
実験計画の通り本磁性体における温熱効果について検討を行っていく予定である。温熱効果ではインキュベーターまた交流磁場を用いて本磁性抗癌剤を42.5度に加温し細胞に発現するHSP70/HSP90をウェスタンブロッティングにて検索する。癌細胞内におけるHSPの主要な役割は,腫瘍抗原ペプチドのプロセシングおよび抗原提示における抗原ペプチドの輸送であり、細胞実験においてこれらの温熱による主要な免疫活性を明らかにする。本研究は申請者、光藤を中心とした横浜市立大学口腔外科学講座にて継続して行われる。細胞実験については大学院生が本研究に参加し温熱効果については共同研究を行っている横浜市立大学循環制御学からアドバイスを受ける予定となっている。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験を行う際の消耗品の購入において以前から使用していた物品を再使用したため予定していた予算に残額が生じた 引き続き研究を継続するにあたり消耗品の購入を予定している
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