研究課題/領域番号 |
25463116
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
光藤 健司 横浜市立大学, 医学部, 准教授 (70303641)
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研究分担者 |
小栗 千里 横浜市立大学, 医学部, 助教 (30400394)
藤内 祝 横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (50172127)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 口腔癌 / ハイパーサーミア / 新規磁性抗癌剤 / 温熱免疫化学療法 |
研究実績の概要 |
本研究では、単剤で抗がん効果、温熱効果を発揮する磁性体を腫瘍局所における選択的な温熱療法のみならず直接加温されていない全身の癌に対しても免疫によって転移癌発生を抑制する新たな温熱免疫化学療法の開発を行う。新規磁性体を腫瘍移植部位に局所投与し温熱をかけることで別の腫瘍部位に対して抗腫瘍効果があることを証明する。我々は既にマウス悪性黒色腫移植モデルを用いて、磁石で本磁性体を悪性黒色腫に集積させ、悪性黒色腫がほぼ観察されない程度にまで縮小することを明らかにしている。また温熱を行うことで局所のHSPの濃度が高まっていることを確認している。新規磁性体を用いた抗腫瘍効果、温熱効果、免疫効果3つを組み合わせることによって、新しい効果的な癌治療法を確立し、将来的に臨床応用を目指す。平成26年度は、本抗癌剤のヒト由来平上皮癌細胞株に対する温熱作用のメカニズムの解明を行った。そこで、はじめに本抗癌剤を発熱させるため交流磁場発生装置の作製と磁性体の発熱条件の検討を行った。アロニクス(株)の協力で共振回路を利用した交流磁場発生装置を組み立てた。小型誘導加熱電源HOT SHOT(AMERITHERM Inc.)と冷却装置RKE1500 DC Inverter (ORION)を利用し、直径3.16mmの銅線を4巻きした内径12mmのコイルを接続した装置を使用した。本薬剤を温熱療法(42.5℃)で使用するため、本薬剤の濃度と交流磁場装置の電流の大きさ変化させて温度上昇の変化をサーモメーターで確認した。本薬剤は、濃度依存的に温度の上昇を示した。交流磁場下で本薬剤は30μMで42℃まで温度上昇することが確認された。高周波磁場下において本薬剤を発熱させることで、抗腫瘍効果のさらなる増強を認めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度は、本抗癌剤のヒト由来平上皮癌細胞株に対する温熱作用のメカニズムの解明を行った。そこで、はじめに本抗癌剤を発熱させるため交流磁場発生装置の作製と磁性体の発熱条件の検討を行った。アロニクス(株)の協力で共振回路を利用した交流磁場発生装置を組み立てた。小型誘導加熱電源HOT SHOT(AMERITHERM Inc.)と冷却装置RKE1500 DC Inverter (ORION)を利用し、直径3.16mmの銅線を4巻きした内径12mmのコイルを接続した装置を使用した。本薬剤を温熱療法(42.5℃)で使用するため、本薬剤の濃度と交流磁場装置の電流の大きさ変化させて温度上昇の変化をサーモメーターで検証した。交流磁場装置を電流300A 周波数308 kHz の条件で本薬剤を15μM、30μMの濃度での温度を確認した。本薬剤は、濃度依存的に温度の上昇を示した。交流磁場下で本薬剤は30μMで42℃まで温度上昇することが確認された。次に、ヒト由来扁平上皮癌細胞株における温度感受性の評価、交流磁場発生装置を用いた細胞傷害性を検討した。本薬剤のヒト由来扁平上皮癌細胞株に対するアポトーシス誘導をフローサイトメトリーで評価した。本薬剤は、15μM、30μMの濃度で使用し、37°C、5% CO2の条件化で12時間刺激した。本薬剤の温熱併用では、12時間刺激のうち1時間を交流磁場下で温熱刺激を行った。 APC Annexin V と7-AADを加え、フローサイトメトリー (BD FACSCanto II, BD Biosciences)で測定した。交流磁場は、 HOT SHOTで 電圧308 KHz 電流300Aの条件で行った。 ヒト由来扁平上皮癌細胞株において、本薬剤で刺激した群に比べて交流磁場をかけハイパーサーミアを併用した群では、抗腫瘍効果の増強を示した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までに得られた結果を元にして、単剤で抗がん効果、温熱効果を発揮する磁性体を腫瘍局所における選択的な温熱療法のみならず直接加温されていない全身の癌に対しても免疫によって転移癌発生を抑制する新たな温熱免疫化学療法の開発をヒト由来扁平上皮癌細胞株を移植したマウスモデルで確立する予定である。 ヒト由来扁平上皮癌細胞をイソフルラン吸入下にてヌードマウスの大腿部に移植し腫瘍直径が10mmになった時点で投与を開始する。決定した投与量を腫瘍移植部に投与し、ヌードマウスの腫瘍部が43℃に安定となるように交流磁場の電流、周波数を調整する。今回の実験では、正確な腫瘍温度の測定が必要なため赤外線サーモグラフィーによる温度測定を行う予定である。赤外線サーモグラフィー装置を用いることで、腫瘍を傷つけることなく正確な温度測定が可能となる。治療群を以下の4グループに分ける。①コントロール(投与なし)、②局所投与、③交流磁場にて磁場印加、④局所投与後、交流磁場にて磁場印加。評価としては、毎日、腫瘍を写真撮影にて記録するとともに、腫瘍サイズから腫瘍体積(体積=0.5×(長径×幅径2)を毎日計測する。また、投薬開始後3週間目に腫瘍組織を摘出し、病理学的解析を行う。その後、腫瘍組織のパラフィン切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色を行い、腫瘍組織観察を行う。また、本磁性体はアポトーシスを誘導する可能性が高いため、腫瘍組織の蛍光TUNEL染色を行い、本磁性体による細胞死の評価を行う。免疫賦活によって転移癌を制御している評価として免疫染色しHSP70の腫瘍内局在を調べる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究が計画よりも順調に進展し、消耗品などの購入を節減できたため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
ヒト由来扁平上皮癌細胞をイソフルラン吸入下にてヌードマウスの大腿部に移植し腫瘍直径が10mmになった時点で投与を開始する。決定した投与量を腫瘍移植部に投与しする。治療群を以下の4グループに分ける。①コントロール(投与なし)、②局所投与、③交流磁場にて磁場印加、④局所投与後、交流磁場にて磁場印加。評価としては、毎日、腫瘍を写真撮影にて記録するとともに、腫瘍サイズから腫瘍体積(体積=0.5×(長径×幅径2)を毎日計測する。また、投薬開始後3週間目に腫瘍組織を摘出し、病理学的解析を行う。その後、腫瘍組織のパラフィン切片を作製し、ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色を行い、腫瘍組織観察を行う。また、本磁性体はアポトーシスを誘導する可能性が高いため、腫瘍組織の蛍光TUNEL染色を行い、本磁性体による細胞死の評価を行う。免疫賦活によって転移癌を制御している評価として免疫染色しHSP70の腫瘍内局在を調べる予定である。
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