研究課題
近年、口腔癌に対する手術、化学放射線療法などの根治療法の進歩により予後の改善を認めるようになったが、一旦遠隔転移を起こした場合には制御困難となり予後不良となる。また口腔多発癌や重複癌症例も増加傾向にあり、予後を左右する。本研究では単剤で抗がん作用、温熱効果を示す磁性体が腫瘍局所における選択的な温熱療法のみならず直接加温されていない口腔癌の遠隔転移巣あるいは重複癌に対しても温熱療法の免疫賦活により抗腫瘍効果を示す新たな温熱免疫化学療法の開発を目的とした。平成25年度はヒト由来扁平上皮癌細胞株における本抗癌剤の作用機序を解明するため、細胞への取り込みを横浜市立大学福浦キャンパスに設置してあるH-7500 transmission electron microscope (Hitachi, Tokyo, Japan)で確認した。ヒト由来扁平上皮癌細胞株に対して、本抗癌剤がアポトーシスを誘導し抗腫瘍効果を示すことを証明した。平成26年度はインキュベーターまた交流磁場を用いて本抗癌剤を約42度に加温し細胞に発現するHSP70/HSP90をウェスタンブロッティングで検出し細胞実験において温熱による免疫活性を明らかにした。平成27年度はそれまでの結果をもとにして、ヌードマウスの両側の大腿部にヒト由来扁平上皮癌細胞株を移植後、片部位のみ腫瘍局所に新規磁性体を投与し交流磁場にて温熱療法を行ったところ、温熱療法による免疫活性によって対側の抗腫瘍効果を明らかにすることができた。
2: おおむね順調に進展している
本研究で用いている抗癌剤がアポトーシスを誘導し抗腫瘍効果を示すことを証明し、さらに細胞実験において温熱による免疫活性を明らかにした。研究は特に問題なく進んでいる。
現在新たな磁性抗癌剤として磁性タキソール (M-PTX) を生成した。これまでの研究によって明らかになった磁性発生のメカニズムをM-PTXに応用し、M-PTXの細胞内の取り込み、細胞増殖への影響、さらに磁石によるM-PTXの腫瘍への集積によって抗腫瘍効果を発現するかを検討する。最終的にはM-PTXが磁石に集積される特徴を生かして、全く新しい、より効果的な癌治療法を確立し、将来的に臨床応用を目指す。
本研究で用いる抗癌剤がアポトーシス誘導、抗腫瘍効果および細胞実験での温熱による免疫活性についての研究が効率的・効果的に進んだため直接経費が節約でき、さらに追加で研究を継続することが可能となった。
新たな磁性抗癌剤 磁性タキソール (M-PTX) を用いた研究を計画している。今後本研究と合わせて結果をまとめて学会発表、論文投稿を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (2件)
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