歯科模型にセンサーを装着して、予備実験を引き続きおこなった。センサー配線の強度の問題も起こり、その工夫も必要であった。センサーの破損もおきた。安定したデータが得られる条件を設定後、さまざまな条件でおこなった。模型での結果、1,センサ-は上顎につけその上顎を動かした開閉口させるため、実際の開口運動の下顎を動かす様式とは異なり、上顎の様々な動きを拾ってしまった。2,センサー配線の緊張も加速度に影響を及ぼした。3,接触時にかかる加速度は臼歯部が強いと考えていたが実際は前歯部の方が強かった。これは、顎関節から回転半径が大きいためと考えられた。咬合時咀嚼時の加速度と接触時の加速度は異なることが判明した。4,また、接触時の加速度は、前歯部は上下と前後方向、臼歯部は上下方向、犬歯部はあらゆる方向に複雑に加速度がかかっていた。5,前歯部は歯軸方向には加速度はかからず、Flare outする方向に、また、臼歯部は比較的歯軸方向にかかり、安定を増強する様式と考えられた。 引き続き、大学の倫理委員会の承認を得た後、実際に口腔内に加速度センサーの装着を試みた。センサーの良好な設置法、センサーからの配線の処理、変換基板の設置は、予測より困難を極めた。当初模型に装着して、実験を行い、その手技はマスターしたが、口腔内の唾液、頬粘膜の干渉に悩まされた。上顎へのセンサーの設置で被蓋は関係無いかと思われたが、困難であった。また、金属冠装着の状態ではセンサーの設置は更に困難であった。当初の思惑通りに行かず、困難なスタートであった。しかし、上顎を動かす模型とは異なり、動かない剛体にセンサーを装着したため、動いた剛体が接触した際の加速度を純粋に測定できた。実際に接触している歯牙であれば測定できるものの、接触していない歯牙では測定できなかった。また、汎用的に測定するための煩雑さも浮き彫りとなった。
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