広範囲侵害性調節とは痛みが痛みを抑制する現象である。これは内因性鎮痛機構と深くかかわっているがその神経メカニズムについては明らかではなかった。本研究はノルアドレナリンを実験的に投与したボランティアの広範囲侵害性調節機構が阻害されることを見出し、さらになノルアドレリン拮抗薬でその現象が阻害されることを見出した。すなわち下行性抑制系のうち少なくとも人ではノルアドレナリン系神経が重要な役割をはたしている可能性が示唆された。また慢性疼痛患者ではこの調節機構が阻害される患者と阻害されない患者がいることを見出した。本研究からこれらの反応の違いから、様々な病態を示す疼痛患者(急性・慢性腰痛患者を含む)の痛み客観的な質の差異を見せることが示唆され、疼痛患者の痛みの質の診断に応用できる可能性を見出した。
|