研究実績の概要 |
今日, 舌癌により失われた口腔機能は遊離皮弁によって再建され, 一定の機能回復を果たしているといえる. しかしながら, 回復した感覚は残存舌からの入力によるものか, 再建舌からの入力によるものか, 大脳半球のどちらに優位性があるのか, 大脳機能局在が変化したのか, 再建した舌と大脳の機能局在を明らかにした研究はない. 本研究では, 脳磁計(Magnetoencephaligraphy,MEG)の特色を最大限に利用して, 再建した舌電気刺激時の大脳皮質一次体性感覚野(SEFs)の成分を明らかにした. 平成25年度に得られた舌再建術後患者ボランテイア6名の残存舌, 再建舌電気刺激によるSEFの潜時, 電流方向, 反応側性をさらに詳しく解析した. 再建舌電気刺激により健常ボランテイア同様, 55ms付近に最大ピークをもつcP55mが確認された. しかし, cP55mが確認されない症例もあり, 従来の解析に加え時間周波数解析をおこなうことにより, 従来解析で確認されなかった脳活動の有無を評価した. 従来の解析では明らかなSEFが確認できなかった症例に対しても時間周波数解析では有為な反応が推定され, 再建舌電気刺激によるSEFは揺らぎを持つ可能性が示唆された. 今後, さらに症例を増やし検討する必要がある. また, 電気刺激による痛覚刺激に加え, 触覚, 温熱感覚という他の刺激について検討する必要がある.
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今後の研究の推進方策 |
育児休暇終了後, これまでの解析結果を基に, 再度研究ボランテイアを募集し, 脳解析を進める. 再度倫理委員会承認が必要なため, 速やかに手続きをおこなう.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究者が産前産後休暇, 育児休暇取得中であるため, 研究計画に遅れが生じた. また温熱刺激装置購入予定であったが, 休暇前に納期が間に合わないため, 購入を延期した.
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