研究課題/領域番号 |
25463130
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
奥原 滋 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 非常勤講師 (10451973)
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研究分担者 |
原田 清 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (30228639)
井関 祥子 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (80251544)
佐藤 豊 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (90361716)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 口蓋裂 / 舌 / Shh |
研究実績の概要 |
ShhEGFP;MFCS4delマウスはSonic hedgehog(Shh)がヘテロ欠失、さらにShhの遠位エンハンサーのひとつMFCS4がヘテロ欠失している遺伝子改変マウスである。このマウスにおいては咽頭諸器官形成期にSonic hedgehog(Shh)の発現が低下し、口蓋裂および舌の低形成を呈することから、このマウスをモデルマウスとして解析を行っている。モデルマウスにおける口蓋裂は口蓋突起が挙上に失敗するために起こること、口蓋突起は舌から自由にした器官培養系では挙上できること、舌や下顎の運動が口蓋突起の挙上に貢献すると示唆する既報があることから、舌の低形成、ひいては機能不全が口蓋裂の主たる原因と目して研究を進めた。その結果、組織学的観察から、内舌筋およびオトガイ舌筋の配列に異常があること、これらの配列に必要と考えられる舌中隔や舌粘膜下固有層が低形成であることが明らかになった。舌中隔は腱のひとつであることから、腱の発生に関与する分子の遺伝子発現をin situ hybridizationで調べたところ、Sox9とScxの舌中隔での発現が低下していた。Sox9は間葉系細胞が凝集し腱を含む種々の組織へと分化してゆく際に、凝集直後に発現する転写因子であることから、凝集の細胞数または密度が低く、細胞間のシグナル伝達が低いために発現の低下として観察されたと考えられる。その結果、腱の発生の主たる転写因子であるScxも遺伝子レベルでの発現が低下したと考えられる。粘膜下固有層は明らかな腱ではないが、内舌筋の停止として機能すると考えられており、Scxの発現は粘膜下固有層と内舌筋の移行部でも低下していた。これらのことから、Shhは、舌中隔におけるSox9やScxの正常発現と、粘膜下固有層におけるScxの正常発現に必要であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画どおり、Shhシグナリングが舌、特に舌筋の配列に及ぼす影響について影響範囲を組織学的および遺伝子発現の観点から明らかにできた。この結果、Shhの遺伝子発現から舌の組織・器官形成を経て口蓋の発生に至るまでが、正常発生と口蓋裂発生の機序の両面において明らかにできた。特に予定外の付加的な知見を得ていないので、「(2)おおむね順調に進展している。」とする。
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今後の研究の推進方策 |
Shhシグナリングが舌中隔構成細胞や粘膜下固有層構成細胞にどのような影響を及ぼす結果Scxの発現が低下しているかを明らかにしたい。発生期のマウス舌由来の間葉系細胞および筋芽細胞を単離できる技術を習得したので、これらを単独ないし混合で培養した上でShhまたはその阻害剤を培養系に添加することで、分子シグナリングと細胞挙動に区別した影響を調べることを計画している。
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