研究課題
高齢者の歯科治療では様々な全身的偶発症が発生するが、なかでも異常高血圧は非常に多い。異常高血圧は単に血圧が上昇するだけでなく重篤な不整脈、心筋虚血、脳卒中などに進展しうるため、その予防は高齢者歯科治療で重要な意味を持つ。異常高血圧を予防するには精度の高い予測が必須となるが、これまで有用な手段がなかった。そこで、血圧をリアルタイムに制御している生体の複雑な循環制御系をシステム同定という工学的手段により解析し、数学モデルとして現すことにより、異常高血圧を予測できるのではないか、という仮説を立てた。本研究の目的はシステム同定を用いて、高齢者歯科治療における異常高血圧の精度の高い予測方法を確立することである。循環系の基本パラメータである、血圧および心拍から、閉ループの同定法により、インパルス応答・伝達関数の算出を行い、CUDAによる演算速度改善のための解析系の構築を行った。循環制御系には主に4つの生理的結合が存在する。すなわち、2つの自律神経を介した結合(①圧受容体における血圧変動と心拍数変動間の結合、②瞬時肺容量変動と心拍数変動の結合)、2つの機械的な結合(③心室収縮とそれによる動脈圧波形の形成における結合、④瞬時肺容量変動と動脈圧変動の結合)が考えられる。平成25年度は①について、TASK FORCE MONITOR (CNSystems Medizintechnik AG)を用いて、体位変換時のBaroreceptor Sensitivity (Sequence Method)について検討した。対象は若年者6名、高齢者4名とした。Supine->Sitting position時のBP Up-Events(以下BP-UP)およびBP Down-Events(以下BP-DW)におけるBaroreceptor Sensitivityは、若年者群で20.0(S.D.=14.6)(ms/mmHg,以下同様),21.9(12.8),高齢者群で、28.6(31.6),7.5(2.8)であった。統計学的有意差は認められなかった。以上の結果、圧受容体における血圧変動と心拍数変動間の結合において、安定した解を得ることができなかった。
3: やや遅れている
平成25年度は圧受容体における血圧変動と心拍数変動間の結合について、TASK FORCE MONITOR (CNSystems Medizintechnik AG)を用いて、体位変換時のBaroreceptor Sensitivity (Sequence Method)について検討した。対象は若年者6名、高齢者4名とした。以上の結果、圧受容体における血圧変動と心拍数変動間の結合において、安定した解を得ることができなかった。研究対象の例数が少なく、解析に用いたソフトウエアが、原データにアクセスできないことと、解析方法、区間を変更できないことがその大きな理由と考えられた。
平成26年度は解析対象を増やし、原データの解析区間を設定し直すなどの対策を改めて行い、結果の精度を向上させる予定である。
平成25年度はソフトウエア作成に必要なパラメータ等、諸条件が十分に確定できなかった。このため、ソフトウエア作成の依頼ができなかったためである。追加実験を行い、ソフトウエア作成に必要なパラメータ、諸条件を確定し、依頼を行う予定である。
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老年歯科医学
巻: 27 ページ: 414-420