研究課題/領域番号 |
25463132
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
吉川 博之 新潟大学, 医歯学総合病院, 助教 (20547575)
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研究分担者 |
瀬尾 憲司 新潟大学, 医歯学系, 教授 (40242440)
照光 真 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (60401767)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 舌神経損傷 / 味蕾 / 末梢神経再生 |
研究実績の概要 |
舌神経損傷により、味蕾の消失・変性が認められ、神経の再生に伴い味蕾の回復が起こることが知られている。本研究では臨床的および基礎的分析により舌神経損傷の病態分析を行うことを目的とする。 基礎的検討では、舌神経損傷モデルラットを用い、舌神経損傷による味蕾を含む舌粘膜表面の形態観察を行っている。これまで舌神経と同様に三叉神経第三枝の下顎神経の終枝である下歯槽神経を切断し、その切断部および神経節においてBDNFmRNA発現の増加を認めた。さらに組織学的に神経切断後、切断部位局所のBDNFの作用を抑えることで切断神経断端の神経突起伸長を抑制、膠原線維の減少および外傷性神経腫形成を抑制することを認めており、以上の結果から、BDNFは組織学的に神経再生に関与する可能性が示唆された。そこで神経切断後の再生軸索の求心路の伝導障害を機能的に評価すべくvon Frey filament 試験による機械的触刺激閾値の測定および三叉神経脊髄路核を介し運動ニューロンにより開口筋(顎二腹筋)の収縮を誘発する開口反射の測定を行った。その結果、抗BDNF抗体の局所投与下に再生された軸索は、機能的にも再生されたことが示された。 これらを踏まえ、舌神経損傷モデルにおいて舌神経再生過程におけるBDNFの関与について検討していく予定である。また味蕾に強く発現する受容体遺伝子をマーカーに味蕾消失との関係を検討していく予定である。 臨床的検討では、新潟大学医歯学総合病院歯科麻酔科を受診した舌神経損傷患者(12名)を対象に解析を行っている。臨床所見上、舌粘膜や舌乳頭の萎縮がみられる患者とみられない患者がいる。これらの患者に対し、高磁場 (3テスラ)または(1.5テスラ)のMRI装置による高分解能3DVR-MRNを用い、損傷舌神経の描出および観察を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
生化学的検討で味蕾のマーカーの再検討を行ったため、実験が停滞した。また前年度より計画しているタンパク質の実験準備が整わなかったため、タンパク発現の解析が進まなかった。さらにラットに対する舌神経損傷後の舌の感覚評価に難渋している。
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今後の研究の推進方策 |
BDNFなどニューロトロフィンの発現をRNAレベルで検討したが、併せてタンパクレベルでの発現をウェスタンブロットまたはELISAを用いて行っていく。さらラットに対する行動学的評価について再検討を行っていく。 臨床的検討において分担研究者とともに臨床症状と画像所見を併せて解析を行い、非侵襲的に舌神経と味蕾消失の関連性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
前述の通り、マーカーの再検討を行ったことにより、実験の進行が進まなかったため、抗体など試薬の購入を控えたことによる。加えて感覚評価が難渋しており当初から購入を予定していたラットに使用する痛覚測定装置の購入を見送ったため。実験の遅れから学会発表に係る経費が大幅に減少したことも次年度への繰り越しが生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
主に実験動物および実験試薬などの消耗品購入。さらに実験施設・実験動物飼育施設使用料、学会発表に係わる費用を計上する。
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