研究課題/領域番号 |
25463133
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
森本 佳成 九州大学, 大学病院, 准教授 (00264870)
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研究分担者 |
丹羽 均 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (30218250)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 糖脂質代謝 / 小児 / 術前絶飲摂食 / ケトン体 |
研究概要 |
小児では、長時間の絶飲絶食は低血糖をきたす危険性があるため、術前の絶飲絶食時間は成人に比較して短く設定されている。7 歳未満の乳児や小児では、貯蔵グリコーゲン量が少ないため、長時間の絶飲絶食による低血糖により早期に脂質動員がおこり、ケトン体産生が増加し、ケトアシドーシスの危険性が増加するとの報告がある。一方、4 歳以上の小児では十分な量のグリコーゲンが貯蔵されているため、通常の術前絶飲絶食を行い、術中はブドウ糖を含まない輸液を行ってもケトン体産生は見られないことから、ブドウ糖投与の必要性はないとの報告もあり、また、11 ヵ月未満の乳児ではブドウ糖を含む輸液を行わないと、ケトン体産生が亢進するとの報告もあり、意見の一致はみられていない。 口腔外科領域における乳幼児の手術としては、3 ヵ月時に口唇形成術、10〜24ヵ月時に口蓋形成術を行うことが多い。これらの時期の乳幼児の手術時に、米国麻酔科学会の「小児術前の絶飲絶食ガイドライン」に基づき術前飲水制限を行い、麻酔中の血中ケトン体量を測定すると、3ヵ月児ではケトン体量の異常上昇は見られないのに対し、10〜24ヵ月児では36%の患児にケトン体量の異常上昇がみられ、特に午後の麻酔症例では51%と高い発生率を示す。本研究の目的は、3ヵ月児および10〜24ヵ月児に通常の術前絶飲絶食を行い、Bioelectrical Impedance Analysis(BIA)法を用いて、乳幼児の体水分量、蛋白量、グリコーゲン量などの体成分値の変化を測定するとともに、血液中の代謝の指標となる項目【ケトン体(βヒドロキシ酪酸、アセト酢酸)、遊離脂肪酸(FFA)、インスリン、レチノール結合蛋白、レプチン、血糖など)を測定し、現在の術前絶飲絶食が糖脂質代謝へ与える問題点を解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度は、本研究を倫理委員会へ申請し承認を受けるとともに、UMINにも登録した。その後、Bioelectrical Impedance Analysis(BIA)法のBioScan 920-IIsystem(エムピージャパン)を購入し、研究に着手した。そのために、研究開始が遅くなり、また保護者への同意取得率も高くはないため、施行症例数は少ないが、術前絶飲絶食により、ケトン体量、遊離脂肪酸量、およびレチノール結合蛋白量に異常な値の変化がみられる傾向が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、引き続き本研究を遂行してゆく。主任研究者が所属施設を異動したため、新たに倫理委員会の審査を受けることになり、時間を要するが、研究方法の変更は行わずに行う予定である。Bioelectrical Impedance Analysis(BIA)法による体成分値とこれら血液学的なパラメータとの関連を検討してゆく。
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