研究課題/領域番号 |
25463140
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
糀谷 淳 鹿児島大学, 医歯(薬)学総合研究科, 准教授 (60304325)
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研究分担者 |
大野 幸 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (00535693)
遠矢 明菜 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (80593649)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 血管内皮機能 / 血管内皮細胞 / 一酸化窒素 / 全身麻酔 / 血管充血反応 / 血管充血反応指数(RHI) |
研究概要 |
高血圧や動脈硬化性疾患患者には血管内皮細胞の機能異常が存在し、血管内皮細胞から分泌される一酸化窒素(NO)による血管拡張反応が障害されることが知られている。周術期の心血管系合併症を減少させたり、悪性腫瘍手術において再建組織の血流を良好に維持したりするには、血管内皮機能を維持する全身麻酔薬を選択することが望ましい。一方、周術期において血管内皮機能の変化を検討した報告はみられない。今回われわれは、プロポフォール・レミフェンタニルによる全身麻酔が、周術期の血管内皮機能に及ぼす影響を検討した。3時間前後の歯科・口腔外科手術を予定されたASA PS1-2の患者8名を対象とした。前腕を駆血して血流を遮断し、駆血を解除すると、再開した血流の『ずり応力』によって刺激された血管内皮細胞がNOを産生し、血管充血反応(reactive hyperemia)と呼ばれる急激な末梢血流の増加を引き起こす。この反応を非侵襲的に指尖部で記録し、血管充血反応指数(reactive hyperemia index; RHI)を算出した。RHIの測定は手術前日、手術終了直後、手術翌日、手術後4日目の計4回行った。全身麻酔はプロポフォール、レミフェンタニルを用いてBIS値を40-60とした。 患者の平均年齢、体重、BMIはそれぞれ40.1歳、59.5kg、21.7であった。平均RHIは手術前日2.56であった。手術終了直後1.46と著しく低下し、手術翌日2.10、手術後4日目2.92と次第に回復した。しかし、3例では手術後4日経過しても術前値に回復しなかった。プロポフォール・レミフェンタニルによる全身麻酔は、RHIで評価した血管内皮機能を著しく低下させ、術前値の回復には4日前後を要することが明らかになった。これにはNOに対する反応性の低下、または血管内皮細胞からのNO産生自体が低下した可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究に参加する症例を安定して確保でき、途中で離脱する症例も少なかった。血管内皮機能の測定が比較的容易で、測定に関するエラーを生じなかった。
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今後の研究の推進方策 |
今後も継続して症例を確保する。酸素・笑気・セボフルランを用いて全身麻酔を行った場合の血管内皮機能を測定し、プロポフォール・レミフェンタニルを用いた静脈麻酔と比較する。
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