研究実績の概要 |
吸入濃度を増加させると、セボフルランとイソフルランでは総頸動脈血流量(CCBF)が変化しないのに対して、デスフルランではCCBFが増加した。この際、イソフルランで舌粘膜組織血流量(TBF)、咬筋組織血流量(MBF)、下顎骨骨髄組織血流量(BBF)が濃度依存性に増加したのに対して、セボフルランではTBF、MBFが、デスフルランではBBFが濃度依存性に増加したが、その増加の程度はイソフルランのそれよりも小さかった。 セボフルラン麻酔下に亜酸化窒素を吸入させるとCCBF、MBF、BBFが増加した。セボフルランにレミフェンタニルを併用するとCCBF、TBF、MBF、BBFが減少し、亜酸化窒素を吸入させるとCCBFは対照値に回復したが、口腔組織血流量は減少したままであった。 セボフルラン麻酔下では、動脈血二酸化炭素分圧の増減による口腔組織血流量の変化はデクスメデトミジン併用の有無に無関係であった。ただし、動脈血二酸化炭素分圧の増減によるMBFの変化の一次回帰直線の傾きはデクスメデトミジン併用時の方が非併用時よりも小さかった。レミフェンタニル併用時には、動脈血二酸化炭素分圧の増減によるCCBFとTBFの変化が抑制されたが、MBF, BBFの変化は影響を受けなかった。 セボフルラン麻酔下にレミフェンタニルを投与し、CCBF、MBF、BBFに加えて外頚動脈血流量(ECBF)、内頚動脈血流量(ICBF)、顎下腺組織血流量(SMBF)を観察した。その結果、MBF、BBFと比較してSMBFの減少の程度が小さく、口腔領域内での血流再分布が起こっている可能性がある。この結果をもとに論文を作成中である。 組織血流量の減少は組織酸素分圧の低下を招く可能性があるが、本研究ではその点について十分な検討が行えなかったので、組織酸素分圧を維持しつつ組織血流量を制御する方法について引き続き検討したい。
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