研究課題/領域番号 |
25463148
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研究機関 | 東京歯科大学 |
研究代表者 |
高木 多加志 東京歯科大学, 歯学部, 准教授 (90192145)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 顎変形症 / 手術シミュレーション / 三次元セファロ分析 / 顎矯正手術 |
研究実績の概要 |
【目的】顎矯正手術は、頭部X線規格写真分析による治療計画が一般的であるが、顎顔面骨格を二次元的に分析する計画には限界もありX線CT画像を用いた三次元計画が必要である。ところが、三次元セファロ分析による診断や治療精度に関する研究はなく、三次元治療システムの医学的妥当性についての検証がなされていない。そこで、手術シミュレーションシステムによる治療計画の精度検証が重要であり、顎骨移動の正確性やそれに伴う軟組織の予測の三次元的精度について医学的根拠(EBM)の確立が急務と考える。【実施計画】X線CTで採取したDICOM3ファイルからSimPlantO&Oで三次元画像を構築し、頭蓋上下顎骨を分離して術前シミュレーションを行い、骨切り位置を実手術へ転写する専用ジグを作製して、術中計測による顎骨移動を行った。さらに、術後1ヶ月で撮影したX線CTより同様に三次元画像を構築して、両者をICP(iterative closest point)法による重ね合わせを行って三次元精度について検討した。【成果】手術シミュレーションによる上下顎骨の移動を実手術へ転写するために作製した専用ジグ(上顎用T-gage、下顎用L-gage)は、簡便な方法によるガイドサージェリーとして実用的であった。。また、Le Fort I型骨切り術は三次元的移動の術中計測が容易なTrapped Osteotomy、下顎枝矢状分割法はshort split法を用いた術式が適切であった。術前、術後のX線CTから得られた三次元画像は、大後頭孔最前方縁(Basion)と左右の頬骨前頭縫合部眼窩縁(Zy)の3点によるICP法による重ね合わせが、最も判読が容易で位置あわせの指標として適切であった。術前、術後の移動した上下顎骨の位置の誤差は、カラーマッピング法で表示して検討したがは最大で1mm程度であり、顎矯正手術の医学的精度としては十分なものであった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究遂行にあたって、もっとも難題であった点は術前シミュレーション三次元画像と術後三次元画像を重ね合わせて、その誤差を表示することであった。手術シミュレーションソフトウエア(SimPlantO&O)の改良により、初年度購入のソフトウエア単体でカラーマッピング法とICP法による誤差の測定は可能となった。しかし、より詳細な解析(ヒストグラム解析)に用いる三次元測定・工学分析用のソフトウエア(3-matic)の導入経費が研究初年度(平成25年繰り越し分)と研究次年度(平成26年度)分を合算しての購入となり、さらに、SimPlantO&Oからの三次元データ出力(STL)が正式サポートされておらず、両ソフトウエアでのデータ共有に問題が生じた。SimPlantO&Oの開発元(Materialise Dental, Belgium)の協力により、SimPlantO&OからのSTL形式でのファイル出力が可能になり、3-maticへの三次元データ(シミュレーションおよび術後)の取り込みが出来ることを確認するのに時間を要した。現段階では、術前シミュレーションと術後の上下顎骨の位置の誤差は、カラーマッピング法による検討のみであるが、今まで検討されなかっ た三次元シミュレーションの精度検証について、精度の概要については達成は出来たが、どの部位での精度が高く、どの部位での精度が低い等の詳細な検討は研究最終年度で行うこととなった。
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今後の研究の推進方策 |
手術シミュレーションと専用ジグおよび術中計測による実手術の三次元画像の精度検証に関して、三次元画像の位置合わせは、3点から4点を用いたICP法による位置合わせ手法が簡便で有効でった。また、両者の一致精度については、カラーマッピング法による精度検証は臨床的には顎変形症の治療における三次元手術シミュレーションの妥当性を示す医学的根拠としては十分であると判断された。したがって、当初の研究計画通りに研究の概要部分は順調にすすでいる。しかし、精度の部分的解析や定量解析については、三次元測定・工学分析用のソフトウエア(3-matic)への三次元データの転送を必要としたため、Materialise DentalとMaterialiseの2社がソフトウエアのデータ共有に関係しており、三次元データの受け渡し手法(STLデータ)において苦慮したが、平成26年度末には解決した。研究最終年度(平成27年度)では、SimPlantO&OでのICP法による重ね合わせを行って三次元座標系を統一し、STL形誌のデータへ変換された手術シミュレーションおよび実手術(術後1ヶ月)の三次元画像を3-maticで読み込んで顎骨の部位、それに対する軟組織の部位での三次元予測の精度を定量的に解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度(平成25年度)購入のソフトウエア単体(SimplantO&O)でカラーマッピング法とICP法による誤差の測定は可能となった。しかし、より詳細な解析(ヒストグラム解析)に用いる三次元測定・工学分析用のソフトウエア(3-matic)の導入経費が研究初年度(平成25年繰り越し分)と研究次年度(平成26年度)分を合算しての購入となったため、前年度経費とと本年度経費での購入となった。さらに、SimPlantO&Oからの三次元データ出力(STL)が正式サポートされておらず、両ソフトウエアでのデータ共有に問題が生じたため、SimPlantO&Oの開発元(Materialise Dental, Belgium)の協力により、SimPlantO&OからのSTL形式でのファイル出力が可能な対応を行ってもらった。3-maticへの三次元データ(シミュレーションおよび術後)の取り込みが出来ることを確認するのに時間を要したため、データ保管用HDD等の購入経費や学会発表等への経費が次年度へ繰り越しとなった。
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次年度使用額の使用計画 |
Materialise DentalへのSimPlantO&OからのSTL出力に関してのデータ変換への経費、三次元測定・工学分析用のソフトウエア(3-matic)ソフトウエアの費用(ライセンス費用)が必要となる。また、三次元画像解析の詳細について、Materialise社エンジニアとの技術相談等にも経費がかかるようである。さらに、研究最終年度での研究結果の学会発表と論文投稿経費なとに使用する。
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