研究課題/領域番号 |
25463150
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
大井 良之 日本大学, 歯学部, 教授 (60271342)
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研究分担者 |
小林 真之 日本大学, 歯学部, 准教授 (00300830)
小柳 裕子 日本大学, 歯学部, 助教 (20609771)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | プロポフォール / 大脳皮質 / アルファ波 / 抑制性シナプス伝達 / 同期性 |
研究概要 |
プロポフォールは今日最もよく用いられている静脈麻酔薬である。近年,プロポフォールによる意識消失時に,脳波においてアルファ周波数帯が増強されることが報告されているが,そのメカニズムは不明である。本研究は,ホールセル・パッチクランプ法を用いて,大脳皮質におけるニューロンの発火同期性に対するプロポフォールの影響を解析することで,プロポフォールによる意識消失時のアルファ周波数帯の脳波増強のシナプスレベルでのメカニズムを解明することにより,麻酔薬の作用機序の核心的な部分を解明することを目的としている。 初年度である平成25年度は,ラット島皮質に存在する錐体細胞および抑制性介在ニューロンから同時ホールセル記録を行い,抑制性介在ニューロンから錐体細胞へシナプス結合を有するペアにおいて,単一抑制性シナプス後電流(uIPSC)に対するプロポフォールの修飾作用を検討した。その結果,大脳皮質においてプロポフォールは,シナプス前細胞がnon-fast-spiking細胞の場合と比較してfast-spiking細胞の場合に,シナプス後細胞である錐体細胞に対するuIPSCのcharge transferを有意に増大させることが明らかとなった。さらに,シナプス後細胞が抑制性介在ニューロンの場合と比較して錐体細胞の場合に,プロポフォールはuIPSCのcharge transferを有意に増大させることが明らかとなった。これらの結果から,大脳皮質においてプロポフォールは,fast-spiking細胞から錐体細胞に対する抑制性シナプス伝達を選択的に強く増強することによってニューロン活動を調節し,脳波変化を惹き起こしている可能性が考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成25年度の研究計画は,抑制性介在ニューロンから錐体細胞への抑制性シナプスにおいて,uIPSCに対するプロポフォールの修飾作用を検討することであった。当初の予定に加えて,シナプス後細胞が抑制性介在ニューロンの場合についても網羅的に解析を行い,その結果は国際雑誌である「Anesthesiology」への掲載が決定している。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に観察された抑制性介在ニューロン―錐体細胞間のuIPSCに対するプロポフォールの効果がどのように錐体細胞同士の発火タイミングに影響するかを検討するため,今後は,同一の抑制性介在ニューロンから投射を受ける2つ以上の錐体細胞の発火タイミングに対するプロポフォールの影響を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
実験に使用していた電気生理実験装置の変更に伴い,約2か月間実験が停止していたため,その間の実験に用いる予定であった試薬およびガラス電極作製用キャピラリー購入費が次年度使用額となった。 実験に使用するVGAT-Venusラットの繁殖のための購入・維持費として,5万円を計上する。実験に用いる器具・器材として,ガラス電極作製用キャピラリー購入費として35万円を計上する。研究成果の発表および聴講による情報の収集のための学会参加・発表費用に関しては,米国麻酔学会および北米神経科学会への参加のために50万円を計上する。分担者2名は,検討に用いる薬物・試薬の購入費(免疫組織化学的検討のための抗体等も含む)として,13万円,30万円をそれぞれ計上する。
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