研究課題/領域番号 |
25463151
|
研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
岡田 明子 日本大学, 歯学部, 准教授 (10434078)
|
研究分担者 |
篠田 雅路 日本大学, 歯学部, 准教授 (20362238)
岩田 幸一 日本大学, 歯学部, 教授 (60160115)
今村 佳樹 日本大学, 歯学部, 教授 (90176503)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 神経障害性疼痛 / 下歯槽神経 / GABA介在神経細胞 / KCC2 / VGAT-Venusラット |
研究概要 |
ラット下歯槽神経を切断し、アロデニアや痛覚過敏を生じさせたIANXラットモデルを作製し、神経障害性疼痛へのGABA介在神経細胞の関与を調べ、延髄におけるK+-Cl-外輸送KCC2の変化による抑制機構の変化を詳細に調べることを目的とした。雄性WistarラットのVenus(蛍光タンパク)とGABAトランスポーター(VGAT)を共発現させた遺伝子変換ラット(VGAT-Venusラット)の下歯槽神経切断 1週間から3週間目まで、顔面三叉神経第2枝領域の機械刺激に対する逃避反応行動閾値は低下したが、Shamラットでは変化しなかった。さらに、KCC2インヒビターであるR-DIOAをShamラットのくも膜下腔に持続投与したところ、IANXラットと同じように機械刺激に対する逃避反応行動閾値の低下が認められた。また、下歯槽神経切断1週間後から、三叉神経脊髄路核尾側亜核(Vc)表層におけるVGAT-Venus陽性細胞の発現が減少した。切断3週間目においては、KCC2陽性発現の減少がみられ、侵害刺激によるVGAT-Venus陽性細胞の活性化が認められた。さらに、GABAAアゴニストのムシモルをIANXラットのVcに局所投与することにより、Vc神経細胞活性の抑制が見られなくなった。よって、切断3週間目では、VcのKCC2発現が減少することにより、VcにおけるGABA様神経細胞の興奮が抑制性から興奮性の作用を引き起こしたことが示唆された。これらの結果より、下歯槽神経切断早期では、Vc表層神経細胞におけるVGATの発現が抑制されてGABAの放出が減少し、後期では、Vc表層神経細胞のKCC2が抑制されることにより、GABA様神経細胞の機能が興奮性に変化する可能性が示唆された。以上の結果より、GABA様神経細胞の変化が下歯槽神経切断後の神経障害性疼痛に関与している可能性が示唆された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
申請時の計画通りに研究は進展している。VGAT-Venusラットの下歯槽神経を切断してIANXラットモデルを作製するのに成功した。さらに、IANXラットモデルとshamラットの下歯槽神経切断3週間目までの顔面三叉神経第2枝領域の機械刺激に対する逃避反応行動閾値行動学的観察を終了した。下歯槽神経切断3週間目のIANXラットモデルとshamラットを用いた電気生理学的解析も行った。また蛍光免疫染色法を用いた解析は、平成26年度の計画の一部まで進んでおり、抗pERK、抗c-Fos、抗KCC2抗体を用いた2重蛍光免疫染色法を終了した。現在までに一通りの実験は終えたが、さらに追加実験やn数の増加などが必要である。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度まで計画していた実験内容はおおむね順調に進展したが、実験完了にむけてn数の増加、追加実験を行っていく。特に、申請時の計画にはなかったが、下歯槽神経切断3週間目のKCC2陽性発現の減少を確認するために、さらにWestern blot法による解析を追加したい。Western blot法は今までにも数回行ってきたため、Western blot法に必要な薬品や遂行する手技は十分整っているといえる。 そして、できるだけ早く実験を終了し、英文雑誌への投稿に向けて実験結果をまとめていきたい。
|
次年度の研究費の使用計画 |
申請時に計画していた学会発表が中止となった。また、研究補助に予定していた者が補助不可能になったため、申請時に計画していた旅費と人件費・謝金を使用しなかったため。 次年度では新たにWestern blot法による解析を予定しているため、Western blot法に関わる抗体や薬品を購入したい。
|