研究課題
ラットの下歯槽神経を切断し、三叉神経第2枝支配領域(V2)に神経障害性疼痛を生じさせたIANXラットモデルを作製し、神経障害性疼痛とGABA介在神経細胞の関与を調べた。さらに、延髄におけるK+-Cl-外輸送KCC2の変化による抑制機構の変化を詳細に調べることを目的とした。実験には雄性WisterラットのVenus(蛍光タンパク)とGABAトランスポーター(VGAT)を共発現させた遺伝子変換ラット( VGAT- Venusラット)を用いた。IANXラットのV2領域の機械刺激に対する逃避反応行動閾値は、神経の剖出のみで神経の切断を行わないShamラットと比較し、下歯槽神経切断1週間から3週間目まで有意に低下した。そこで、KCC2のインヒビターであるR-DIOAをShamラットのくも膜下腔に持続投与したところ、IANXラットと同じように機械刺激に対する逃避反応行動閾値が低下した。また、切断1週間後に 三叉神経脊髄路核(Vc)表層におけるVGAT- Venus陽性細胞の発現量が低下した。切断3週間目では、VGAT- Venus陽性細胞上の細胞活性マーカーであるpERK陽性発現が増加し、KCC2の発現量が減少した。さらに、GABAAアゴニストのムシモルをShamラットのVcに局所投与すると侵害受容神経細胞の活動放電の抑制がみられたが、IANXラットへの投与では抑制が認められなかった。よって、切断3週間目では、VcのKCC2発現が減少することにより、VcにおけるGABA様神経細胞の興奮が抑制性から興奮性の作用に変化した可能性が示唆された。これらの結果より、下歯槽神経切断1週間では、Vc表層神経細胞におけるVGATの発現が抑制されてGABAの放出が減少し、切断3週間では、Vc表層神経細胞のKCC2が抑制されることにより、GABA様神経細胞の機能が興奮性に変化すると考えられた。以上より、GABA様神経細胞の変化が下歯槽神経切断後の神経障害性疼痛に関与している可能性が示唆された。
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