研究課題
本研究では、口腔癌の浸潤転移機構の解明と悪性度組織診断指標の確立を目指して、腫瘍微小環境の構成要素(腫瘍細胞、血管・リンパ管内皮細胞、筋線維芽細胞、マクロファージ)を免疫表現型と空間位置情報に基づき分画した上で、それらの細胞間相互作用を網羅的に解析する。リンパ節転移や遠隔転移を示した口腔扁平上皮癌(舌癌)の原発病巣を解析対象として、癌胞巣形状(サイトケラチン;CK)や癌病変全域における脈管走行(血管内皮CD31,CD34、リンパ管内皮D2-40)、マクロファージ(CD68、CD163)・線維芽細胞(S100A4)の局在を捉えるため、連続薄切切片(4μm厚;~100枚)に対する多重免疫標識と立体構築法を用いて細胞間相互作用を複合的に解析した。舌癌浸潤先端部の3次元観察では、CK陽性癌細胞の母集団近傍に1~10個程度の癌細胞で構成された微小浸潤胞巣が分散しており、癌細胞の単細胞浸潤や集団浸潤の共存がみられた。間質要素では、癌胞巣内外を走行する血管内皮の表現型が変化に富むこと、血管を介して癌浸潤先端部に集積するM1/M2マクロファージの分布が異なることも確かめた。さらに、舌扁平上皮癌でのリンパ節転移機序を探る目的で、原発病巣における癌胞巣と脈管との接触箇所とリンパ管内侵襲部位を網羅的に検出するとともに、リンパ管侵襲に間質細胞が関与するか検討した。その結果、侵襲部位ではD2-40陽性のリンパ管内皮に囲まれて、CK陽性の癌細胞集団が塞栓を起こし、癌細胞周囲にS100A4陽性線維芽細胞が集積しているのが確認できた。これらの3次元解析により、癌微小浸潤様式として単細胞遊走と集団遊走の発生頻度と免疫表現型の特徴、癌微小浸潤胞巣を先導する筋線維芽細胞(CAF)、癌細胞と脈管内皮細胞を橋渡しするマクロファージ(TAM)の局在を明示できた。さらに、線維芽細胞にエスコートされた癌細胞集団は上皮形質を維持した状態で移住しリンパ管腔内に侵襲することを明らかにした。
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