研究課題
我々は、これまで一過性局所脳虚血再灌流後に大脳皮質虚血負荷領域においても免疫組織化学染色法および電子顕微鏡を用いた形態学的に神経幹細胞が産生される可能性を明らにした。今回、虚血負荷領域の組織を採取し、細胞培養を行うことで虚血負荷により誘導される神経幹細胞の特性を観察した。6-10週令のCB-17/icr- SCID /SCIDマウス(雄)の左側中大脳動脈に7.0ナイロンモノフィラメントを使用して、吸入麻酔下で脳傷害を起こさない15分間、および脳傷害が発生する20分間の一過性虚血誘導操作を行った。虚血再灌流操作3日後に虚血負荷領域の組織を採取し、18ゲージ、23ゲージと27ゲージの針を通過させて解離し、接着培地で培養し細胞数を数えた。この細胞をニューロスフィア様細胞塊の形成を促進する浮遊培地中で培養し、得られたニューロスフィア様細胞塊を神経分化培地で分化し、免疫組織化学染色を行った。対照として、正常側の組織を採取し培養した。その結果、虚血巣より得られた細胞は永久閉塞による梗塞巣からは500-700万個、20分虚血後の虚血巣からは、200-300万個、15分虚血後の脳からは80-250万個であり、一過性虚血後には内因性幹細胞産生数は少ないことが示唆された。しかし、一過性虚血負荷組織からもニューロスフィア様細胞塊が形成され、これらはTuj-1陽性であった。以上より、軽度の虚血負荷後であっても神経幹細胞産生は起こるが、虚血負荷が軽いとその産生量は少なく、また、神経細胞への分化も少ないことが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
虚血負荷領域から採取し、接着培地で培養した細胞数を比較し虚血負荷の程度により内在性神経幹細胞数が異なることが示唆され、これまでのin vivoでの実験結果と同様の結果がin vitroでも証明された。さらに、これらの細胞を浮遊培地において培養することにも成功し、細胞数は少ないもののニューロスフェア様細胞塊の形成にも成功し、今後の神経分化能の特性を解析する観点においても実験経過は順調に進展しているものと考えている。
虚血負荷により誘導される神経幹細胞を培養し、形成されたニューロスフェア様細胞塊について免疫組織化学染色、形態学的特性についてさらに探求するとともに、得られた神経幹細胞の起源が血管周皮細胞である可能性についても検討する予定である。
虚血負荷を加えることにより得られた細胞の起源を明確にする上で、免疫組織染色が必要であり,抗体試薬が必要である。さらに,細胞培養に必要な培地、試薬が必要である。免疫染色電子顕微鏡観察を行う上でも試薬を含む消耗品が必要である。神経幹細胞のマーカーであるnestin抗体,血管周皮細胞のマーカーであるPDGF-β,幼弱神経細胞マーカーであるTuj-1等と用いて電子顕微鏡による形態学的観察を継続する計画である。
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