研究課題/領域番号 |
25463164
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
八若 保孝 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (60230603)
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研究分担者 |
中村 光一 北海道大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (50580932)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歯学 / 乳歯 / 根管治療 / 根管洗浄 / 水酸化カルシウム製剤 / pH |
研究実績の概要 |
根管治療の実施にあたり、根管内壁をいかに良い状態(スミヤ層が除去され、象牙細管が開口している状態)にするかが、治療の予後に大きく影響を与える。これまで、永久歯では、EDTAと次亜塩素酸ナトリウムを使用した超音波洗浄が効果的であり、乳歯では、次亜塩素酸ナトリウムを使用した超音波洗浄が有効であることを示してきた。根管内壁の状態と貼薬剤である水酸化カルシウムの拡散様相を把握することは、根管治療の効率化、予後の向上には重要な点である。 水酸化カルシウムの拡散様相に関しての研究において、水酸化カルシウム貼薬による歯根外表面へのアルカリ性の拡散は、根管洗浄による根管内壁の状態に影響を受け、象牙細管の開口が不十分な場合、アルカリ性の拡散の程度は低く、反対に良好な根管洗浄状態(象牙細管の開口が十分な場合)では、アルカリ性の拡散の程度が高かった。この拡散により、歯根外表面のpHの上昇が貼薬後速やかに現れ、1~2週での拡散の程度が最も高かく、その後も拡散が継続して認められた。また、アルカリ性の拡散において、水酸化物イオンだけでなく、カルシウムイオンも、歯根外表面に到達していることを示すことができた。これにより、良好な根管洗浄を行った後の水酸化カルシウムの根管貼薬は、水酸化カルシウムの効果を有効に発揮させることが示された。さらに、我々が先の研究で、親水性と疎水性の違いを示しており、歯根外表面への効果を考慮すると、まず親水性の貼薬剤を使用し、速やかにそして広範囲に水酸化カルシウムの効果を拡散させ、その後疎水性の貼薬剤により、状態を維持しながら安定を図る方法が、小児歯科臨床において有効である可能性が示唆された。 さらに、歯根吸収抑制を意図した水酸化カルシウムの効果を把握するため、培養系を用いた研究を遂行している途中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
水酸化カルシウムの拡散様相については、概ね把握することができるまでに至ったが、培養系による歯根吸収抑制効果の検討についてが遅れている。使用する培養系を用いた歯根吸収モデルについては、前年度からその再現性に安定が見られず、試行錯誤の繰り返しになっていたが、ここまでの努力で、やっと再現性が安定してきた。そのため、培養系の歯根吸収抑制効果の検討にまで至っていない。
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今後の研究の推進方策 |
遅れている培養系による歯根吸収抑制効果の検討について、この部分の研究を早急に進行させることを最重点において、水酸化カルシウムの拡散様相と合わせ、本研究をまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
培養系の実験が再現性の問題で十分進んでいない状況が続いていたため、培養系実験に使用する予定の助成金の一部を次年度に回して、遅れを挽回することになった。
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次年度使用額の使用計画 |
培養系の実験の再現性がやっと安定してきたため、遅れていた培養系の実験の遂行に合わせて使用する予定である。
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