研究課題/領域番号 |
25463167
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
小川 卓也 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 講師 (50401360)
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研究分担者 |
森山 啓司 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20262206)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歯学 / 人類遺伝学 / OFCD / BCOR / 歯根形成 |
研究概要 |
Oculofaciocardiodental (OFCD) syndromeはX連鎖性優性遺伝形式の女性のみに発症するまれな疾患で、特異的顔貌、心臓および眼の異常、ならびに長い歯根といった特徴を認める。今年度は、当分野を受診したOFCD患者2例において、その表現型を詳細に比較し、原因遺伝子であるBCOR の新規変異を同定し、うち一例から得られた歯髄・歯根膜細胞を用い、分子遺伝学的検討を加えた。症例1および症例2ともに特異的顔貌、眼の異常といった典型的な臨床症状を呈していたが、心臓の異常は症例1のみに認められた。また口腔内所見として、2症例ともに主症状である長い歯根の他、先天性欠如歯、埋伏歯、口蓋裂を認めたが、症例1の方がより重篤な表現型を示す傾向が認められた。ダイレクトシークエンス法でBCOR遺伝子の全翻訳領域とエクソン/イントロン境界の塩基配列を決定したところ、症例1にナンセンス変異 (c.4794G>A, p.W1598*)を、症例2にフレームシフト変異 (c.3668delC, p.S1223Wfs*14) (既に採択された若手研究(B)において報告済み)をそれぞれヘテロ接合性に認めた。また、症例2より歯科矯正治療のため便宜抜歯された下顎第一小臼歯から得られた培養歯髄・歯根膜細胞において、BCOR のmRNAの発現量を正常コントロールと比較したところ、歯根膜細胞においては有意な減少を認めた。さらにシクロへキシミドを添加し、ナンセンス変異依存mRNA分解機構 (NMD) の関与の可能性について検討したところ、患者由来の培養歯根膜細胞において、BCORの発現量に有意な増加を認めた。培養歯根膜細胞において認められたNMDが歯根長に異常を生じる原因となっている可能性が示唆された。これらの成果は、Journal of Human Geneticsに掲載予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
患者由来の歯髄・歯根膜細胞を用いて、歯根膜細胞におけるナンセンス変異依存mRNA分解機構の関与の可能性により歯根長に異常を来す可能性が示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
多くの場合、早期終止コドンが形成された場合、NMDにより異常タンパク質は生成されず、遺伝子変異による表現型の緩和が予測される。しかしながら、C末端の欠損したタンパク質が正常な機能を一部保持している場合には、NMDによる変異mRNAの排除は疾患症状を憎悪させる可能性もある。また、NMDが部分的に生じ、変異タンパク質が生成される可能性も考えられる。そこでタンパク質レベルでも検索し、変異タンパク質の機能を検索する
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次年度の研究費の使用計画 |
予定していた研究分担者が行う実験を翌年度以降に行うため。 変異BCORタンパク精製のためのキットの購入に使用する。
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