研究実績の概要 |
Oculofaciocardiodental (OFCD) syndromeはX連鎖性優性遺伝形式の女性のみに発症するまれな疾患で、特異的顔貌、心臓および眼の異常、ならびに長い歯根といった臨床的特徴を認める。原因遺伝子であるencoding BCL-6-interacting corepressor (BCOR) は転写抑制因子とされているが、その機能には不明な点が多い。そこで、27年度はOFCD syndromeにおいて既に報告されている変異を含むBCORの機能解析を行い、核移行シグナル (nuclear localization signal: NLS) の同定を試みた。 方法として、Site-directed mutagenesisを用い、変異蛋白発現ベクターを作製し、COS7細胞に遺伝子導入し、細胞内における変異蛋白の局在を免疫染色により検討した。さらに、NLSプログラム解析 (NLS mapperならびにPSORT II) により、 古典的核移行シグナルを同定することとした。結果として、 遺伝子型と表現型の明らかな関連性は認められなかったものの、免疫染色ならびにNLSプログラム解析により、BCORのアミノ酸配列中に古典的核移行シグナルを2カ所(RVDRKRKVSGD, aa1131-1141 (NLS1); LKAKRRRVSK, aa1158-1167 (NLS2))同定することができた。NLS1およびNLS2を含むBCORの局在は主に核内であったものの、NLS2内のアミノ酸配列を変異させたところ、核内だけでなく細胞質にも局在を認めた。一方、NLS1内のアミノ酸配列のみに変異を加えると、主に核内でその局在を認めた。以上により、 NLS2がBCORの核移行に重要な機能を果たしており、疾患原因遺伝子の機能解明に患者情報の有用性が示唆された。
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