研究課題/領域番号 |
25463168
|
研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
小林 起穂 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 助教 (20596233)
|
研究分担者 |
森山 啓司 東京医科歯科大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (20262206)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | Craniosynostosis / FGFR / FGF / miRNA / 歯科矯正学 / 先天性疾患 |
研究概要 |
真核生物に広く保存されているmicroRNA(miRNA)はゲノム上に多数存在し、タンパク質をコードしない小分子RNAである。miRNAが個体発生、形態形成、細胞死、細胞増殖等様々な生命現象を制御していることが明らかとなることで、新たな遺伝子発現調節ネットワークの存在が注目され、miRNAの機能異常と疾患との関わりも報告されている。 先天性骨系統疾患の一つである頭蓋冠縫合部早期癒合症は、近年その原因遺伝子が報告されているが、明らかとされている遺伝子は極一部に過ぎない。頭蓋冠縫合部の発生には様々の遺伝子発現が時間的・空間的に制御されているが、その発現調節機構の詳細は不明である。本研究は、頭蓋冠縫合部の発生、およびその関連疾患の発症機序に関与するmiRNAを同定し、その機能解析を行うことを目的とする。頭蓋冠縫合部早期癒合症(craniosynostosis)は、胎生期あるいは出生後早期に頭蓋骨間の線維性結合組織が骨性癒合する先天性骨系統疾患の一つであるこれら顎顔面領域の骨格に形態異常を呈する先天性疾患は、顎骨の形態異常に起因する重篤な不正咬合を併発するため、外科的矯正治療の対象となる場合も多く、非侵襲的かつ病態成立機構に根ざした有効的な治療法の確立が国内外で強く期待されている。miRNAという新しい遺伝子発現調節機構が内軟骨性骨化において重要な役割を果たすことが個体レベルで証明されている。 研究代表者らのこれまでの研究成果をさらに発展させるため、miRNAの分子機構と膜性骨化および頭蓋骨縫合部発生・成長、疾患との関わりを明らかにすることは、顎顔面領域に形態異常を呈する先天性骨代謝疾患に対し、新たな創薬ターゲットを探索し、新規治療法の開発基盤となることが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
顎顔面矯正学分野で飼育するASモデルマウス(Ap)及び同腹コントロールマウス(Ct)(胎生15.5日齢)頭蓋冠より冠状縫合部を摘出し、当該部位におけるmiRNAを抽出後、miRNAアレイ(3D-Gene mouse miRNA、東レ)にて疾患特異的変動miRNAの抽出を行った。両群間で有意な発現の差が認められたmiRNAについては、縫合部における発現量をリアルタイムPCR法にて検索した。【結果】1265種類のmiRNAについて発現を検索したところ、ApおよびCtの冠状縫合部において511種類のmiRNAの発現が確認された。Ctと比較してApにおいて19種類のmiRNA発現が有意に亢進し、5種類のmiRNA発現が抑制されていた。リアルタイムPCRにより、Ctと比較して、Ap(n=3)においてmmu-miR-182-5p、mmu-miR-206-3pの有為に高い発現が確認され、mmu-miR-133a-3pの発現が高い傾向にあった。【考察】頭蓋冠縫合部の発生過程におけるmiRNAの発現およびその機能は全く不明であったが、本研究により500種類以上のmiRNAが発生中の頭蓋冠縫合部に発現することが明らかとなり、何らかの役割を果たす可能性が示唆された。Ap特異的に高発現するmiRNAとしてmmu-miR-205-5p mmu-miR-182-5p、mmu-miR-206-3pを同定した。今後、当該miRNAの標的遺伝子を検索し、新たな縫合部発生制御機構を検索することが課題と考えられる。【結論】頭蓋冠縫合部早期癒合症発症にmiRNAが何らかの役割を果たす可能性が示唆された。
|
今後の研究の推進方策 |
今後、当該miRNAの標的遺伝子を検索し、新たな縫合部発生制御機構を検索することが課題と考えられる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
研究の進捗が予定よりも早く、次年度に予定していた培養細胞を用いた研究を遂行するため。 消耗品、試薬の発注に使用する。
|