研究課題
変形性顎関節症(TMJOA)は、骨・関節の変性疾患であるが、原因もさることながら、その治療法は未だ確立されていない。本研究の目的は、TMJOAにより破壊された下顎頭の骨・軟骨に対する低パルス超音波(LIPUS)の修復効果を明らかにすることである。12週齢のWistar系雄性ラット24匹をControl群、LIPUS群、MIA群、MIA+LIPUS群の4群に分け、20週齢まで飼育した。MIA群とMIA+LIPUS群にはTMJOAモデル作製のためにMonoiodo-acetate(MIA)を関節腔に注入し、OAを誘発した。LIPUS群、MIA+LIPUS群は16週齢から20週齢までの4週間、毎日LIPUS照射を行った。形態学的評価として下顎頭を毎週マイクロCT撮影、骨密度(BMD)、骨量(BMC)および骨体積(BV)を算出し、多重比較検定を用いて統計学的解析を行った。MIA群とMIA+LIPUS群を比較した結果、BMD, BMC, BVの値が有意に増加し、TMJOAにおける骨修復効果が確認された。しかし、MIA+LIPUS群をControl群と比較した結果、完全な骨修復までには至らなかった。BMDの値は、MIA+LIPUS群ではLIPUSを照射し始めた16週齢から18週齢において有意に増加し、18週齢と20週齢の間では有意差は認められなかった。つまり、成熟ラットにおけるLIPUS照射の効果が高かった期間は最初の2週間であった。また、Control群の結果より、LIPUS照射は健全な下顎頭に対する侵襲性が無いことも分かった。今後、LIPUS照射による軟骨における修復効果も、組織学的に解明していく予定である。将来的には、臨床における有用性を明らかにしていきたいと考えている。
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日本顎変形症学会雑誌
巻: 26 ページ: 195-201
巻: 26 ページ: 275-283