研究課題
平成17年に制定された食育基本法により、国民全体に「食育」への関心が高まっている。哺乳から始まる摂食行動は、離乳、手づかみ食べを経て、自ら食具を用いる咀嚼へと習熟していく。しかし、乳幼児におけるこれらの報告は、症例提示や経験則の域を出ていない。一方、食育の啓発により、保護者や保育の現場における食物の与え方や食べ方、そして歯列咬合への関心の高まりは著しく、曖昧模糊とした小児の口腔機能の発達過程に関するエビデンスの提供は急務である。そこで、乳幼児の捕食動作の計測および解析を行った。乳幼児は被験者であるものの、指示等を理解することが不可能であること、計測環境への順応、空腹の設定が容易でないこと、などから、誤解を恐れず言えば、研究対象としては動物実験より難しい点があった。特に計測者や環境への反応(泣いたり、興味を持ったり)、下の写真にあるマーカーの貼付およびそれを維持すること、計測カメラからの距離を保つ(静止)こと、手が自由に動くこと、などが大きな問題であった。その中から得られた所見は、捕食時には頭蓋全体が前方に移動するとともに、頭部は後屈していた。しかし、その後屈量は成人に比較して量が大きく、開口量に対して下顎の移動量は限られていた。比較検討を行う目的で、成人における捕食(初期咀嚼量)から嚥下に至るまでの下顎の三次元運動動態を解析したところ、捕食量により運動時間や運動範囲が異なるものの、ともに別々の閾値があることが示唆された。乳幼児の捕食や摂食、咀嚼、嚥下に至る過程については、定性的な観察も必要であることが示唆された。
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