研究課題
障がい者や非協力小児に対する歯科治療において、行動管理は治療の成否をも左右する重要な要素である。しかし、我々歯科医がそれらをコントロールする手段は多くはなく、抑制器具を使用かつ人力で体動を抑え込むよう試みることが多く、精密作業が求められる歯科治療は困難を極めるのが現状である。そこで本研究ではアドレナリンに代わって、デクスメデトミジンを加えた局所麻酔薬を使用し、副作用・デメリットとして考えられている鎮静作用を、行動管理法の一つとして使用する可能性を探るのが目的である。本研究では、静注用の鎮静剤として認可されている薬剤を歯科用局所麻酔薬に混注し使用するため、適応外使用の範疇となることからより慎重な運用が必要であった。そのため確固たる安全性を確保することが本研究遂行の絶対条件であり、被験者の呼吸や循環といったバイタルサインをいかにモニタリングするかが非常に重要であった。健常な成人であればモニタリングは容易であるが、歯科治療に対する恐怖・嫌悪を露わにする障がい者・非協力小児の治療中のモニタリングは想像以上に困難であった。血圧測定においては、単回の測定は可能であるが計測の導入に至るまでに、定時的に継続して計測することに困難を極めた。障がい者では体動が大きく測定器具がずれてしまい計測不能になることが多く、非協力小児においては測定器具自体の感度の問題で計測不能なことが多かった。これらの不具合がみられた際、測定器具の再装着のためには抑制具の解除が必要となるため、治療の中止につながる可能性を鑑みると計測を中断せざるをえなかった。経皮的静脈血酸素飽和度に関しては、低環流や体動に強い計測器を用いても、血圧と同様に継続的な計測が困難であった。障がい者や非協力小児においては、鎮静に至るまでの導入の期間にいかに安全を担保できるかが行動管理上の課題であると考えられた。
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