研究実績の概要 |
健常な日本人から唾液検体を採取し高濃度のアモキシシリンを含有したレンサ球菌選択寒天培地に播種したところ,約 5 %の検体において培地上にコロニーの発育が認められた.これらのコロニーをピックアップし,これらの菌株からゲノム DNA を抽出し 16S rRNA を PCR 法で増幅した後,その遺伝子配列を決定しデータベース上の各種細菌の 16S rRNA 配列と比較した.これらの対象から感染性心内膜炎の起炎菌となり得る Strepptococcus mitis,S. oralis 等のレンサ球菌が特定された.次に,分離した菌株の各種抗菌薬に対する最小発育阻止濃度 (Minimum inhibitory concentration; MIC) を米国標準化委員会 (Clinical Laboratory and Standards Institute; CLSI 2011) の方法を用いて,決定したところ,他の抗菌薬に対しても高い耐性を示す傾向があることが明らかとなった. さらに,アモキシシリンに対する耐性はペニシリン結合タンパク質(penicillin-binding protein, PBP) である PBP1A,PBP2X,PBP2B をそれぞれコードする遺伝子の変異が関与していることが考えられることから,これらのアモキシシリン耐性菌株の PBP1A,PBP2X,PBP2B を PCR 法で増幅し,その遺伝子配列を決定し分離された各菌種の標準菌株の PBP1A,PBP2X,PBP2B 配列と比較した.その結果,これらの遺伝子配列の変異が認められ,アモキシシリン耐性の獲得に関与している可能性が示唆された.今後,これらの菌株を特異的に検出する PCR 系を確立するとともに, IE 発症高リスク者における口腔細菌の感受性に関する検討を大規模に分析する必要があると考えられる.
|