研究課題/領域番号 |
25463184
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
泰江 章博 徳島大学, ヘルスバイオサイエンス研究部, 助教 (80380046)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | ゲノム編集 / TALEN / CRISPR/Casシステム |
研究概要 |
遺伝子機能の解析は生命科学を深く理解する上で重要であることから、これまでにも様々な種において多くの遺伝子改変動物(トランスジェニック・ノックアウトなど)が作製されてきた。しかし、マウスにおいては受精卵前核マイクロインジェクションやES細胞を用いた相同組換えなど、その作製には多大な熟練と労力を要する。近年開発された人工ヌクレアーゼ(ZFN/TALEN)によるゲノム編集は、ES細胞フリーでゲノム配列操作を可能にし、PCR法以来の革命的技術とも謳われている。本研究は、これまで敷居の高かった上記遺伝子改変マウス作製を、ZFN/TALENによるゲノム編集からアプローチすることで、手技の超簡便化、費用・時間の大幅削減を図り、誰でも着手可能なほどのシンプル化を目指した。また、申請時には発表されていなかったCRISPR/Casシステムのマウス胚への応用も行った。 Fgf10遺伝子を標的としたTALEN RNAをマウス1細胞期胚にマイクロインジェクションを行ったところ、50%近い確立で標的遺伝子配列の変異を認めた。また、F0マウス同士の交配により、F1への生殖系列移行も示すことが確認された。 一方で、CRISPR/Casシステムを同様にマウスFgf10遺伝子で試み、guide RNAならびにCas9 RNAをマウス1細胞期胚にマイクロインジェクションした結果、標的配列破壊効率は最大100%で、四肢欠損胚を認めるF0マウスも多数獲得された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
マウスFgf10遺伝子を標的としたTALENプラスミドから、in vitroにおいてRNAを合成・精製し、マウス1細胞期胚にマイクロインジェクションを行った。一晩培養し、2細胞期に発生したものを偽妊娠マウス卵管に移植した。帝王切開により、胎生13.5~16.5日で胚を摘出し、その表現型ならびに遺伝子型を解析した結果、濃度によっては、50%近い確立で標的遺伝子配列の変異を認めた。F0四肢欠損胚の獲得は10%に満たなかった。F0マウス同士の交配により、F1への生殖系列移行も示すことが確認された。 一方で、申請時には発表されていなかったCRISPR/Casシステムを用いた標的配列破壊を、即座にマウス胚へ応用・検討した。TALEN同様と比較検討するため、同じFgf10遺伝子を標的とし、TALENで標的とした配列を含む3箇所に領域を設定、guide RNAならびにCas9 RNAを、マウス1細胞期胚にマイクロインジェクションし、翌日、2細胞期に発生したものを偽妊娠マウス卵管に移植した。その結果、最大100%の効率で変異導入が確認され、またF0で多数の四肢欠損胚を得られた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画以上に進展しているため、今後はssODNやレポーター遺伝子のノックインを検討していく。 ヒトの遺伝性疾患のほとんどは点突然変異であるが、これら変異の実験動物での再現にはノックイン技術が不可避である。従来のES細胞を用いた手法では、高コストなため、個々の遺伝性疾患の再現は現実的ではなかったが、本プロジェクトで利用したTALENならびにCRISPR/Casシステムをマウス1細胞期に適用により網羅的に処理される現実味を帯びている。 本課題ではノックインマウス作製は再来年度の予定であったが、課題達成度が進展しており、同手法のマウス胚での確立も報告されてきているため、早急に対応することとする。また、レポーター遺伝子といったカセットのノックインも併せて並行する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本実験計画を遂行するに当たり、当該年度に購入予定だった発生工学的実験の関連試薬・消耗品が次年度購入予定に変更となった。 平成26年6月頃に関連試薬・消耗品などを購入予定である。
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