研究課題/領域番号 |
25463195
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
飯嶋 雅弘 北海道医療大学, 歯学部, 准教授 (20305915)
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研究分担者 |
橋本 正則 大阪大学, 歯学研究科(研究院), 准教授 (00337164)
六車 武史 北海道医療大学, 歯学部, 助教 (20343436)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バイオアクティブガラス / 表面改質 / スパッタリング / 矯正材料 / 再石灰化 / 脱灰抑制 / エナメル質 / セラミックス |
研究実績の概要 |
本研究では、Na2O、CaO、SiO2およびP2O5を成分とするバイオアクティブガラスを用いて、ブラケット用アルミナの表面改質を行い、高生体親和性、抗菌性および石灰化誘導能を有する材料表面の創製を試みた。バイオアクティブガラスの原材料を溶融・粉砕してターゲットを作製し、高周波マグネトロンスパッタリング法によりアルミナ(板状、板状試料)表面にバイオアクティブガラスの層を形成する(BG試料)方法を確立した。BG試料を蒸留水と酸溶液(pH 4.5)に浸漬し、溶出イオンの定量とpHの経時的変化を分析したところ、試料から経時的にCa、P、NaおよびBイオンの溶出が認められ、酸溶液のpHは上昇した。BG試料を人工唾液に浸漬し、バイオアクティブガラス層の結晶形成能を調べたところ、1週間浸漬後の試料表面には、針状の石灰化物が多数観察された。6か月間浸漬後、試料表面にはタブレット状の石灰化物が認められ、元素分析より、これらの石灰化物はCaとPから形成されていた。タブレット状石灰化物より得られたラマンスペクトルには、リン酸水素カルシウム二水和物とβ-リン酸三カルシウムのピークが認められ、エックス線回折スペクトルには、リン酸カルシウムのピークが認められた。これより、改質試料表面には、バイオアクティブガラス層より溶出する各種イオンと人工唾液の成分からリン酸カルシウム系の石灰化物が形成されることが考えられた。さらにリン酸溶液で脱灰したエナメル質をBG試料とともに人工唾液中に浸漬し、その再石灰化挙動を経時的ナノインデンテーション法を用いて調べた。BG試料とともに浸漬したエナメル質は、単独で浸漬したエナメル質よりも有意に高い再石灰化挙動を示した。以上より、アルミナに対するバイオアクティブガラスを利用した表面改質層は、エナメル質の脱灰抑制作用と再石灰化誘導能を発揮することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バイオアクティブガラスのターゲットを作成し、アルミナ試料を高周波マグネトロンスパッタリング法により改質する技術が確立された。試料表面に形成されたバイオアクティブガラス層は、多種溶出イオンによる環境の緩衝能や再石灰化の促進機能等が発揮されることが予測された。現在までの基礎的実験から、(1)バイオアクティブガラス層の人工唾液中における結晶形成能、および(2)脱灰エナメル質に対する再石灰誘導能に関してまとめた論文が国際誌に掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、アルミナ製ブラケットを歯に接着した場合のエナメル質周囲の脱灰抑制能を調べることに加え、細胞培養試験と抗菌性の評価を行う予定である。より高い抗菌性を発揮するバイオアクティブガラス表面改質方法を開発するために、銀を5%配合したバイオアクティブガラスを試作し、細胞培養試験を行う予定である。また、バイオガラスを溶液中に分散させ電気化学的に試料表面を処理する実験を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
バイオガラスを溶液中に分散させ電気化学的に試料表面を処理する実験を行うための高速バイポーラ電源を購入予定であり、機種選定に先だって行う予備的実験のデーター解析が遅れている状況である。
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次年度使用額の使用計画 |
バイオガラスを溶液中に分散させ電気化学的に試料表面を処理するための高速バイポーラ電源を5月中に購入予定である。
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