研究実績の概要 |
本研究の目的は、100%の頻度で第三臼歯(M3)を欠如しているELマウスを用い、先天欠如歯発症の遺伝要因を解明し、ヒトの先天欠如歯の原因解明の足がかりとすることである。ELとコントロールマウスの蕾状期歯胚においてどのような遺伝子に発現の違いがあるかをDNAマイクロアレイ解析により検出を行った。EL歯胚においてLef1, Fgf20, Fgf4の著名な発現低下を確認した。DNAマイクロアレイ解析の結果を確かめるため、マウスM3歯胚からのトータルRNAを用いてqRT-PCR解析を行った。結果、ELのM3歯胚において、Lef1, Fgf20, Fgf4の著名な発現量の低下を認めた。さらに、Fgf20, Fgf4のM3歯胚におけるELと対照間の発現量の差と部位を組織学的に検証するため、in-situ hybridization法を行った。結果、ELマウスではFgf20, Fgf4ともM3歯胚に発現シグナルを認めなかった。すなわち、これまでの結果を再現することができた。過去の文献よりEdaが歯形成初期にFgf20とFgf4を調節すると報告があるため、EdaのqRT-PCRを行った。結果、対照に比較しELマウスのM3のEdaの発現は有意に増加していた。続いてLef1、Fgf20、Fgf4,Edaのエクソン内に変異があるかどうかを分析するためにシークエンス解析を行った。ELのFgf4のエクソン2において、アミノ酸配列に変化のない1つのサイレント変異を検出した。一方、Lef1、 Edaのエクソンでは変異は認められなかった。 以上の結果から、ELマウスの蕾状期M3歯胚におけるLef1、Fgf20、Fgf4のmRNA発現の減少がM3の先天欠如に関与する可能性を示唆した。またELのM3でのEdaのmRNA発現上昇は、M3発生に対して抑制的に働いている可能性を示唆した。
|