研究実績の概要 |
本研究では, 歯根膜細胞におけるNotchシグナル伝達に着目し, 矯正治療中に生じる歯根吸収の発生メカニズムを検討した。 平成25年度ではIn vivoにおいて, 5週齢のWistar系ラットを用いて上顎第一臼歯を50gの強い矯正力で7日間近心に牽引し, 当該部の切片はHE染色ならびに, TRAP抗体, Jagged1抗体, Notch2抗体, RANKL抗体およびIL-6抗体を用いて免疫組織化学染色を行った結果、矯正力を加えたラットの圧迫側歯根表面には吸収窩が認められ, その周囲にTRAP, Jagged1, Notch2, RANKLおよびIL-6陽性細胞の増加を認めた。平成26年度はIn vitroにおいてはヒト歯根膜細胞 (hPDL cells)にcompression force (CF)を作用させ, Jagged1, RANKLおよびIL-6の発現をreal-time PCRおよびELISA法を用いて検討した。また, 破骨・破歯細胞の分化及び活性能を観察するために破骨前駆細胞 (hOCs)に, CFを作用させたhPDL cellsの上清を加えTRAP染色, pit formation assayを行った。同時にRANKLとIL-6の発現にNotchシグナルが関与しているかを検討するため, Notchシグナルの阻害剤である、γ-セクレターゼ阻害剤 (GSI) にてNotchシグナルを阻害した群およびJagged1単独の群についても検討を行った。 その結果, in vitroにおいて, CFを負荷したhPDL cellsのJagged1, RANKLおよびIL-6の発現が有意に増加し, Notchシグナル抑制下において, RANKLおよびIL-6の発現が有意に減少した。また, 破骨細胞培養系においてもCF群およびJagged1群でTRAP陽性細胞が増加した。この事からJagged1によるNotchシグナルは破骨細胞の分化を増強する効果があることが明らかとなった。 以上の結果から, 強い矯正力を作用させた歯根膜細胞において, Jagged1とNotch2のNotchシグナルを介してRANKLとIL-6が誘導され, 破歯細胞分化を促進することにより歯根吸収を惹起させる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度はIn vitroにおいてはヒト歯根膜細胞 (hPDL cells)にcompression force (CF)を作用させ, Jagged1, RANKLおよびIL-6の発現をreal-time PCRおよびELISA法を用いて検討した。また, 破骨・破歯細胞の分化及び活性能を観察するために破骨前駆細胞 (hOCs)に, CFを作用させたhPDL cellsの上清を加えTRAP染色, pit formation assayを行った。同時にRANKLとIL-6の発現にNotchシグナルが関与しているかを検討するため, Notchシグナルの阻害剤である、γ-セクレターゼ阻害剤 (GSI) にてNotchシグナルを阻害した群およびJagged1単独の群についても検討を行った。 おおむね26年度の実験計画は予定通り、遂行することができたが、アレルギーマウスについては実験が遂行できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度では26年度に遂行できなかったアレルギーマウスいついて上顎第一臼歯を50gの強い矯正力で7日間近心に牽引し, 当該部の切片はHE染色ならびに, TRAP抗体, Jagged1抗体, Notch2抗体, RANKL抗体およびIL-6抗体を用いて免疫組織化学染色を行う。また、notch signalを抑制すると考えられているwnt signalについて歯根吸収時の発現について検討を行う予定である。
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次年度使用額の使用計画 |
おおむね26年度の実験計画は予定通り、遂行することができたが、アレルギーマウスについては実験が遂行できなかった。 平成27年度では26年度に遂行できなかったアレルギーマウスいついて上顎第一臼歯を50gの強い矯正力で7日間近心に牽引し, 当該部の切片はHE染色ならびに, TRAP抗体, Jagged1抗体, Notch2抗体, RANKL抗体およびIL-6抗体を用いて免疫組織化学染色を行うため、繰越金812,223円を使用する予定である。
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