研究実績の概要 |
本研究の目的は矯正治療による歯根吸収発生メカニズムに対して歯根膜線維芽細胞とIL-17産生ヘルパーT細胞(Th17細胞)におけるシグナル伝達、特にNotchシグナルに焦点を当て歯根吸収時の歯根膜線維芽細胞とTh17細胞におけるNotch とそのリガンドであるJagged1の発現について,細胞生物学的、病理組織学的に検討し、重度歯根吸収発生機構の解明を行う。 平成27年度では、in vivoにおいて, 5週齢のWistar系ラットを用いて上顎第一臼歯を10gの至適矯正力で7日間近心に牽引し, 牽引側の切片はHE染色ならびに、Notchに対して抑制的に働き、骨形成に関与する因子である Wnt5a抗体を用いて免疫組織化学染色を行った。In vitroにおいてはヒト歯根膜細胞 (hPDL cells)にWnt5aを作用させ, ALPとCOL-1の発現をreal-time PCRを用いて検討した。 その結果、in vivoにおいて, 矯正力を加えたラットの牽引側歯根膜にはWnt5a陽性細胞の増加を認めた。さらに, in vitroにおいて,Wnt5a(100ng/ml)を添加したhPDL cellsのALPとCOL-1の発現が有意に増加した。この事からWnt5aはNotchシグナルを抑制し、歯根膜細胞の分化を増強する効果があることが明らかとなった。 平成28年度では4.0gの持続的圧迫力を加えた歯根膜細胞からリアルタイム-PCR法にてNotch, IL-17 mRNAの発現量を定量した結果、Notch, IL-17 mRNAの発現量が増大した。 以上の結果から, 歯の移動時の牽引側では歯根膜細胞において,Wnt5aシグナルを介してALPとCOL-1が誘導され, 歯根膜細胞分化を促進することにより骨形成を促進させる可能性が示唆された。
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