研究概要 |
気管支喘息はアレルギー反応や細菌・ウイルス感染などが発端となった気管支の炎症が慢性化することで気道過敏性の亢進,可逆性の気道狭窄を起こし,発作的な喘鳴,咳などの症状をきたす呼吸器疾患である.Substance Pは,タキキニン受容体の作動薬として,平滑筋収縮,血管拡張,血管透過性亢進,粘液分泌亢進,肥満細胞活性化などの作用を示す.研究代表者らは最近の研究で,この受容体の1つであるNeurokinin (NK)1が平滑筋細胞増殖の抑制に関与する可能性を示す結果を得た. まず,細胞増殖アッセイキットCyQuantを用いて、気管支平滑筋の細胞株 およびヒト気管支平滑筋由来の初代培養細胞に,各種成長因子 (Epidermal growth factor, Fibroblast growth factor, Lysophosphatidic acid, Platelet-derived growth factor: PDGFなど)やIL-4/IL-13などを作用させて、細胞増殖試験の予備実験を行った.各種成長因子により平滑筋細胞の増殖は認められたが,条件設定が困難で,substance Pによる明瞭な抑制効果は認められなかった.今後、気管支平滑筋培養細胞に適した別の細胞増殖試験を検討する予定である. 次に,細胞増殖に係わる分子(ERK, Akt, Stat3, P70S6Kなど)の活性化をWestern blot法を用いて確認した.遺伝子導入を行いNK1を高発現させたヒト気管支平滑筋由来の初代培養細胞にPDGFを作用させると,Aktの活性化の指標であるリン酸化Aktが増加した.Substance Pで前処理すると,このAktのリン酸化が抑制され,気管支平滑筋の細胞増殖抑制にSubstance Pが関与する可能性が示唆された.
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今後の研究の推進方策 |
まずは、気管支平滑筋の細胞増殖の抑制効果をみるために適した細胞増殖試験を模索する.DAPI染色を利用した試験を検討予定である.また,NK1の細胞増殖抑制に関わる細胞内シグナル伝達に関与する分子を検討する.mTORやPTENなどを検討していく予定である.また,筋収縮に働くアセチルコリン,Rho activator, グルコン酸カリウムを用い,その増強因子と思われる細菌成分,ハウスダスト,金属イオン等を併用して,膜電位の変化を電位感受性色素を使用したFLIPR 蛍光イメージングプレートリーダーで測定する.筋弛緩に働く拮抗薬や古来より喘息に良いと言われている植物由来成分(生姜・漢方など)についても併用し,治療薬としての可能性を探る.
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