本研究の目的は,加齢に伴う歯根膜組織の改造活性能と矯正的歯の移動量との関係について解析することだった. 実験には10~80週齢のWistar系雄性ラットを用い,上顎臼歯を同一な規格で移動可能なcoilspringを応用した移動装置を用いた.上顎右側第一臼歯を近心方向に2週間牽引した.脱灰標本より通法に従い厚さ約3~5μmの水平断連続切片を作製し,H-E染色により各週齢による歯根膜面積を計測した.歯根膜内の分裂細胞活性はCD34活性免疫染色を行い,各週齢による歯根膜単位面積あたりの陽性細胞数を定量化した.また同部位にTetrate-resistant acid phosphatase(TRAP)活性染色を行い,各週齢による破骨細胞数を歯根周囲組織改造活性の指標とした.実験開始2週間後,1)歯の移動量は加齢と共に有意に減少した.2)歯根膜内における細胞の分裂能による検索ではCD34陽性細胞数は実験群では対照群と比較し多く観察されたが、加齢に伴い減少する傾向が認められた.また,3)破骨細胞数は実験群では対照群と比較し多く観察されたが,加齢に伴い有意に減少した. 以上より,加齢による歯根膜内における細胞の分裂能の減少は歯根周囲組織の改造活性に影響を与える可能性が示唆された. 上記実験系に高周波照射群を設け,その効果を組織学的に検討した.実験には10週および50週齢のWistar系雄性ラットを用い上顎右側第一臼歯を近心方向に2週間牽引し,周波を照射した.平断連続切片を作製し,CD34活性免疫染色およびTRAP活性染色を行い細胞活性をを定量化した.実験開始2週間後,高周波照射群の歯の移動距離および,歯根膜内におけるCD34陽性細胞の活性能は,加齢群においても増加する傾向が認められた. 以上より,高周波による刺激により実験的歯の移動における細胞の分裂活性能は増加することが示唆された.
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