本研究では、様々な細胞への分化能を有することで注目されているヒト乳歯歯髄細胞において、炎症部位の組織破壊をもたらす種々のサイトカインやMMP、そして抗炎症作用を持つアデノシンやHSPが、どのように関連しているかについて解明し、歯髄炎に対する治療指針の可能性の範囲を拡大させるとともに、幹細胞として有用である歯髄細胞の保存に向けて再生医療への路を拓くことを目的として行った。 その結果、39~40度の熱刺激を30分与え、その後37度で30~60分培養を行った細胞は、無刺激のものと比較して細胞増殖能に影響がないことを明らかにした。さらに細胞保護に重要と考えられているHSP産生について検討を行った結果、39~40度の熱刺激を30分与え、その後37度で30~60分培養を行った細胞は、heat shock proteinA 遺伝子が最も増強することが明らかとなった。またタンパク発現についてElisa kitを用いて検討を行った結果、HSP70の産生増強が確認できた。さらに、短時間での熱刺激(5分)を与えた際のHSPの影響についても検討を行い、短時間の熱刺激ではHSP27遺伝子の変動を明らかにした。 また、乳歯歯髄細胞に存在するMuse細胞を組織修復へと応用することを目的として、まずは乳歯歯髄由来培養細胞からMuse細胞を分離することを試みた。その結果、0.67%のMuse細胞が存在することが示唆され、乳歯歯髄細胞由来Muse細胞のクラスター形成が確認できた。
|