歯周炎は、歯周病原細菌感染により慢性的な炎症が誘導され、歯周組織が破壊される慢性炎症性疾患である。よって、歯周組織での炎症を制御するような物質は、歯周炎の予防や進行抑制に有用であると考えられる。 赤ワインに多く含まれるポリフェノールの1つであるレスベラトロールは、in vitroや動物モデルの研究において糖尿病や動脈硬化症などの老化関連性疾患に防御的に働くことが報告されている。また、レスベラトロールには抗炎症性作用や骨保護作用があることも報告されており、炎症性疾患や骨疾患に対する効果が期待されている。 本研究では、①歯周病原細菌に対する歯肉上皮細胞の炎症性応答に対するレスベラトロールの作用とそのメカニズム、②マウスの咬合性外傷モデルにおけるレスベラトロールの骨保護作用とそのメカニズム、について解析を行った。 ①においては、歯肉上皮細胞を歯周病原細菌P. gingivalisにて刺激した場合、各種炎症性サイトカインが遺伝子およびタンパクレベルで上昇したが、レスベラトロールの添加により、その上昇は抑制された。そのレスベラトロールの作用メカニズムとして、サーチュインの1つであるSIRT1の関与を考え、SIRT1ノックダウンやSIRT1阻害剤を用いた解析を行ったが、明らかな関与は認められなかった。次に、AMPK、活性酸素種を介したメカニズムについて検討したが、それらの関与も明らかにはならなかった。最後に、レスベラトロールはNF-κBの核内移動を抑制することを明らかにしたが、そこに至る詳細なメカニズムについてはさらなる解析が必要である。 ②においては、コンポジットレジンの築盛により、マウスの咬合性外傷モデルを作製した。レスベラトロールを経口投与すると、咬合性外傷で生じる分岐部骨吸収を抑制することが明らかになった。今後は、そのメカニズムについて検討が必要である。
|