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2013 年度 実施状況報告書

IL-10応答を中心とした歯周病原細菌感染に対する慢性炎症成立機構の基盤解明

研究課題

研究課題/領域番号 25463216
研究機関新潟大学

研究代表者

中島 貴子  新潟大学, 医歯学総合病院, 講師 (40303143)

研究分担者 多部田 康一  新潟大学, 医歯学系, 助教 (20401763)
伊藤 晴江  新潟大学, 医歯学系, 助教 (30397145)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードIL-10 / 歯周炎 / マウス
研究概要

感染性炎症性歯槽骨吸収におけるIL-10の役割を明らかにするためにヒト歯周炎歯肉ならびにマウス歯周炎モデルを解析した。
1. ヒト歯周炎歯肉組織におけるIL-10とTh1細胞にIL-10産生を誘導すると言われている転写調節因子E4BP4発現の解析を行った。ヒト歯肉炎(N=8)および歯周炎(N=9)患者歯肉の定量的RT-PCRの結果、我々の2005年の報告同様に、IL-10 mRNA発現は歯周炎で歯肉炎よりも高い傾向が認められたが有意差はなく、E4BP4の発現にも両群間に有意差はなかった。
2. マウスP. gingivalis口腔感染誘導性歯槽骨吸収におけるIL-10発現の解析を行った。10回感染後に有意な歯槽骨吸収を認めたが、ヒト歯周炎歯肉での傾向とは異なり歯肉でのIL-10 mRNA発現は有意に減少していた。In vitroにおいて単球細胞株THP-1とRaw cellをP. gingivalis LPSにて刺激したところ、IL-10 mRNA発現を確認した。
3. P. gingivalis感染による歯槽骨吸収よりも強い歯肉の炎症を伴う歯周炎モデルとして、マウスの臼歯歯頸部に絹糸を結紮してプラーク停滞させたLigature誘導性炎症性歯槽骨吸収の進行と治癒におけるIL-10の役割の解析を行った。P. gingivalis感染モデルとは異なり、歯槽骨吸収に一致して歯肉のIL-10 mRNA発現が有意に上昇していた。ligatureを撤去すると、10~14日で歯槽骨レベルの有意な回復と歯肉IL-6 mRNA発現の有意な減少を認めたが、歯肉IL-10 mRNAの発現はligature撤去後も変化しなかった。以上より、強い炎症応答時には抑制性サイトカインIL-10産生が上昇し、炎症の誘因が取り除かれたのちもその発現が持続して歯肉の炎症と歯槽骨の治癒過程を進める可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画通り、ヒト歯周炎歯肉での解析とマウスのP. gingivalis感染モデルの解析を行ったところ、予想と同じ傾向が認められたものの、検出したIL-10応答の程度が期待よりも低かった。そこで、in vitroで数種類の免疫担当細胞をP. gingivalis刺激して主要なIL-10産生細胞とそのメカニズムを解明するという計画を単球細胞株での確認にのみいったん止めることとした。その代わりに、感染性炎症性歯槽骨吸収をより明確に観察できるligatureモデルを確立することとし、順調に成功した。このモデルではP. gingivalis感染ではないものの、プラーク細菌感染による歯肉の炎症が著明で、またligatureを除去することにより歯周炎の緩解、治癒過程を想定した観察ができることを確認し、そのときのIL-10の発現動態を解析することに成功した。

今後の研究の推進方策

Ligatureモデルという感染性炎症性歯槽骨吸収のマウス実験モデルが確立できたので、これを用いて歯肉の炎症と歯槽骨吸収の進行・治癒の過程におけるIL-10の発現動態をさらに詳細に解析する。そのために、IL-10を局所または全身性に投与することによる影響を観察する。次に、この実験モデルにおける主要なIL-10産生細胞をつきとめ、制御性細胞TregおよびNKT細胞の役割を解析する。また、ligatureにP. gingivalisを付着させてP. gingivalis感染時の免疫応答、組織破壊におけるIL-10の関与を解析していく。その際に、マウスの血管、肝臓などの臓器解析をすることにより、歯周炎とメタボリックシンドロームとの関わりの中でIL-10がどのように関与しているのも明らかにしていく予定である。

次年度の研究費の使用計画

予定していたP. gingivalis口腔感染マウスの実験系を見直し、実験期間の短いligatureモデルを確立したため、マウス飼育にかかる費用が抑えられた。マウス臓器の細胞解析は新しい実験系で次年度以降に行うことになったのでとフローサイトメトリ-用抗体の購入を見合わせた。一部の学会での発表旅費を、他の経費により充足することができた。
繰り越した金額は、マウスの飼育費用、抗体等の実験試薬の購入費用、学会発表のための旅費に充当する予定である。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2014 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Age-related alterations in gene expression of gingival fibroblasts stimulated with Porphyromonas gingivalis.2014

    • 著者名/発表者名
      Domon H, Tabeta K, Nakajima T, Yamazaki K.
    • 雑誌名

      J Periodontal Res

      巻: 未定 ページ: 未定

    • DOI

      10.1111/jre.12134

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Natural killer T cells mediate alveolar bone resorption and a systemic inflammatory response in response to oral infection of mice with Porphyromonas gingivalis.2014

    • 著者名/発表者名
      Aoki-Nonaka Y, Nakajima T, Miyauchi S, Miyazawa H, Yamada H, Domon H, Tabeta K, Yamazaki K.
    • 雑誌名

      J Periodontal Res

      巻: 49 ページ: 69-76

    • DOI

      10.1111/jre.12080

    • 査読あり
  • [学会発表] Regulatory Cell Subsets in the Pathogenesis of Periodontitis.

    • 著者名/発表者名
      Nakajima T
    • 学会等名
      2nd Meeting of the International Association for Dental Research Asia Pacific Region (IADR-APR)
    • 発表場所
      Bangkok, Thailand
    • 招待講演
  • [学会発表] Antiinflammatory effects of resveratrol in human gingival epithelial cells.

    • 著者名/発表者名
      Minagawa T, Okui T, Nakajima T, Tabeta K, and Yamazaki K.
    • 学会等名
      2nd Meeting of the International Association for Dental Research Asia Pacific Region (IADR-APR)
    • 発表場所
      Bangkok, Thailand
  • [学会発表] Porphyromonas gingivalis感染はNKT細胞のサイトカイン産生を誘導する.

    • 著者名/発表者名
      山田ひとみ、中島貴子、宮澤春菜、奥井隆文、多部田康一、山崎和久
    • 学会等名
      第138回日本歯科保存学会2013年度春季学術大会
    • 発表場所
      福岡
  • [学会発表] Porphyromonas gingivalis口腔感染マウスモデルにおいて小胞体ストレスは破骨細胞形成に関与し歯槽骨吸収を誘導する

    • 著者名/発表者名
      土門久哲、山田ひとみ、宮内小百合、宮澤春菜、中島貴子、多部田康一、山崎和久
    • 学会等名
      第138回日本歯科保存学会2013年度春季学術大会
    • 発表場所
      福岡
  • [学会発表] Porphyromonas gingivalis口腔感染はマウス腸内細菌叢を変動させインスリン抵抗性を誘導する

    • 著者名/発表者名
      山崎和久、有松圭、土門久哲、山田ひとみ、宮内小百合、宮澤春菜、皆川高嘉、中島麻由佳、中島貴子、多部田康一
    • 学会等名
      第56回春季日本歯周病学会学術大会
    • 発表場所
      東京
  • [学会発表] Porphyromonas gingivalis口腔感染マウスモデルで誘導させるインスリン抵抗性は脂肪組織及び肝臓における炎症反応と関連する

    • 著者名/発表者名
      有松圭、土門久哲、山田ひとみ、宮内小百合、宮澤春菜、皆川高嘉、中島麻由佳、中島貴子、多部田康一、山崎和久
    • 学会等名
      第56回春季日本歯周病学会学術大会
    • 発表場所
      東京
  • [備考] 歯周-全身プロジェクト 山崎研究室

    • URL

      http://www.dent.niigata-u.ac.jp/yamazaki_labo/

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公開日: 2015-05-28  

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