歯周炎は歯の表面に付着するバイオフィルム中に含まれる歯周病原因細菌により惹起される慢性炎症性疾患であり、過剰な免疫応答が歯槽骨吸収を初めとする歯周組織破壊に関与している事が明らかとなっている。近年、免疫担当細胞の中でもTh1細胞あるいはTh17細胞と呼ばれるhelper T細胞サブセットが歯槽骨吸収に関与している事が示唆されている。今回の研究ではTh1細胞およびTh17細胞浸潤・集積に関与するケモカインとして知られているCXC chemokine ligand 10 (CXCL10)ならびにCC chemokine ligand 20 (CCL20)の歯周炎病変局所での産生を制御できる物質を見つけるべく活性型ビタミンDであるカルシトリオールに着目し検討を行った。 炎症性サイトカインの一つであるIL-1βはヒト歯周組織構成細胞の一つであるヒト歯根膜由来細胞(HPDLC)のCXCL10ならびにCCL20産生を濃度依存的に誘導した。カルシトリオールで前処理を行うことによりIL-1βが誘導したHPDLCのCXCL10ならびにCCL20産生は抑制された。また、CXCL10ならびにCCL20産生抑制効果はJNKリン酸化の抑制ならびにIκB-α分解抑制の結果起こることも明らかとした。 ゆえにビタミンDは歯周炎病変局所においてTh1細胞あるいはTh17細胞浸潤を抑制する事により炎症性歯槽骨吸収を抑え、歯周炎の進行を減弱させうる可能性が示唆された。
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