歯周病原菌による歯肉上皮でのエピジェネティクス機構の解明

2016 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 25463223
• 研究機関: 北海道医療大学
• 研究代表者: 西村 学子 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (10337040)
• 研究分担者: 太田 亨 北海道医療大学, 個体差健康科学研究所, 教授 (10223835) ; 荒川 俊哉 北海道医療大学, 歯学部, 准教授 (40306254) ; 古市 保志 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (80305143) ; 安彦 善裕 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (90260819)
• 研究期間 (年度): 2013-04-01 – 2017-03-31
• キーワード: エピジェネティクス / 歯周疾患 / 線維芽細胞 / DNAメチル化 / P.gingivalis / 歯周病原菌 / 歯周組織

研究実績の概要

エピジェネティクスは、後天的には主に環境因子により遺伝子の表現系が変化する現象である。歯周炎に関わる環境因子としての多くは、口腔内で長時間にわたり歯周病原菌に曝されている環境下にあり、これがエピジェネティクス修飾を誘発し、歯周病の発症・進行に関与している可能性がある。そこで、P.gingivalis由来LPSを、ヒト歯肉由来線維芽細胞に長期間作用させた際のエピジェネティクス変化について研究を行った。ヒト歯肉由来線維芽細胞にLPS長期刺激(1~４ヶ月間)を与え、DNAメチレーションアレイにより解析したところ、fibronectin type III（FN）とαI(XII)collagen(XII-collagen)の プロモータ領域のCpG islandにDNA高メチル化領域が見出され、メチル化特異的PCRである定量的MSP法においてもDNA高メチル化が確認された。高メチル化のみられた両遺伝子XII-collagenとFNは、RT-PCRにより有意なmRNA発現減少を認め、この現象にはDNAメチル化が関与していることが考えられた。さらに、XII-collagenやFN以外の細胞外基質タンパク(ECM)関連の７遺伝子のmRNA発現においてもDNA高メチル化が起こっており、ECM関連遺伝子が歯肉線維芽細胞のエピジェネティクスに強く影響していることが考えられた。また、ECM関連遺伝子とDNAメチル化の関連性についてCELISA法によるタンパク質解析で、XII-collagenとFNの有意な発現減少が認められた。さらに、これらのmRNA及び蛋白発現の減少は、脱メチル化剤5-Azaにより回復することも実証された。このことから、P.gingivalis由来LPSの長期刺激はDNAメチル化と強く関連しており、歯周疾患の発症や増悪にエピジェネティクス修飾が影響していることが示唆された。

研究成果

• [雑誌論文] Immunohistochemical evaluation of Klotho and DNA methylansferase 3a in oral squamous cell carcinomas. (2017)
  • 著者名/発表者名: Bhoj Raj Adhikari, Osamu Uehara, Hirofumi Matsuoka, Rie Takai, Fumiya Harada, Masafumi Utsunomiya, Takatoshi Chujo, Tetsuro Morikawa, Mamata Shakya, Koki Yoshida, Jun Sato, Toshiya Arakawa, Michiko Nishimura, Hiroki Nagayasu, Itsuo Chiba, Yoshihiro Abiko.
  • 雑誌名: Med Mol Molphol. 巻: - ページ: 印刷中
  • DOI: DOI 10.1007/s00795-017-0156-9
  • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
• [雑誌論文] DNA hypermethylation of extracellular matrix-related genes in human periodontal fibroblasts induced by stimulation for a prolonged period with lipopolysaccharide derived from Porphyromonas gingivalis. (2016)
  • 著者名/発表者名: Takai R, Uehara O, Harada F, Utsunomiya M, Chujo T, Yoshida K, Sato J, Nishimura M, Chiba I, Abiko Y.
  • 雑誌名: J Periodontal Res. 巻: 51 ページ: 508-517
  • DOI: doi: 10.1111/jre.12330.
  • 査読あり / オープンアクセス
• [学会発表] Effects of Administration of LPS Derived From P. gingivalis on Kidney Gene-expression in Mice. (2017)
  • 著者名/発表者名: M. Nishimura, F. Harada, O. Uehara, T. Morikawa, R. Takai, K. Yoshida, J. Sato, I. Chiba, Y. Abiko.
  • 学会等名: 95th IADR
  • 発表場所: Sanfrancisco, USA
  • 年月日: 2017-03-22 – 2017-03-25
  • 国際学会
• [学会発表] Polyamines Remove DNA Methylation of COL15A1 Caused by LPS. (2017)
  • 著者名/発表者名: R. Takai, O. Uehara, T. Morikawa, F. Harada, K. Yoshida, J. Sato, M. Nishimura, I. Chiba, Y. Abiko, T.Ohta.
  • 学会等名: 95th IADR
  • 発表場所: Sanfrancisco, USA
  • 年月日: 2017-03-22 – 2017-03-25
  • 国際学会
• [学会発表] Epigenetic silencing of anti-aging gene Klotho may laed to hypermethylation of DNMT3a in oral cancer: Immunohistochemical analysis. (2017)
  • 著者名/発表者名: hoj Raj Adhikari, Hirofumi Matsuoka, Fumiya Harada, Takatoshi Chujo, Tetsuro Morikawa, Puja Neopane, Osamu Uehara, Koki Yoshida, Michiko Nishimura, Itsuo Chiba, Yoshihiro Abiko.
  • 学会等名: 第35回北海道医療大学歯学会・学術大会
  • 発表場所: 札幌
  • 年月日: 2017-03-04 – 2017-03-04
• [学会発表] エピジェネティクス修飾により脱分化したマラッセ上皮細胞の間葉系分化能の検討． (2016)
  • 著者名/発表者名: 森川哲郎，吉田光希，清水 綾，平木大地，Neopane Puja，Adhikari Bhoj Raj，原田文也，中條貴俊，植原 治，佐藤 惇，西村学子，安彦 善裕．
  • 学会等名: 第９回日本口腔検査学会総会・学術大会
  • 発表場所: 福島
  • 年月日: 2016-10-01 – 2016-10-02
• [学会発表] P. gingivalis由来LPSによる腎臓の網羅的遺伝子発現解析． (2016)
  • 著者名/発表者名: 原田文也，植原 治，森川哲郎，虎谷斉子，髙井 理衣，吉田光希，佐藤 惇，西村学子，千葉逸朗，安彦善裕．
  • 学会等名: 第９回日本口腔検査学会総会・学術大会
  • 発表場所: 福島
  • 年月日: 2016-10-01 – 2016-10-02
• [学会発表] アレコリン長期添加による口腔上皮のDNA高メチル化の網羅的解析． (2016)
  • 著者名/発表者名: 吉田光希、Bhoj Raj Adhikari、森川哲郎、原田文也、中條貴俊、植原 治、佐藤 惇、西村学子、千葉逸朗、安彦善裕．
  • 学会等名: 第26回日本口腔内科学会総会・学術大会
  • 発表場所: 岡山
  • 年月日: 2016-09-23 – 2016-09-24
• [学会発表] エピジェネティクス修飾を受けたマラッセ上皮様細胞における幹細胞マーカーの発現上昇． (2016)
  • 著者名/発表者名: 吉田光希，森川哲郎，Adhikari Raj Bhoj，原田文也，中條貴俊，植原 治，佐藤 惇，西村学子，齊藤正人，安彦善裕．
  • 学会等名: 第58回歯科基礎医学会学術大会・総会
  • 発表場所: 札幌
  • 年月日: 2016-08-24 – 2016-08-26
• [学会発表] アレコリンよる歯肉上皮細胞でのDNA異常メチル化について． (2016)
  • 著者名/発表者名: Adhikari Raj Bhoj，植原 治，清水 綾，平井大地，森川哲郎，Neopane P, 高井理衣，佐藤 惇，西村学子，安彦善裕．
  • 学会等名: 第58回歯科基礎医学会学術大会・総会
  • 発表場所: 札幌
  • 年月日: 2016-08-24 – 2016-08-26
• [学会発表] Expression of Stem Cell Markers in ERM by Epigenetic Agents. (2016)
  • 著者名/発表者名: Koki Yoshida,Osamu Uehara, Tetsuro Morikawa, Bhoj Adhikari, Fumiya Harada, Takatoshi Chujo, Rie Takai, Jun Sato, Michiko Nishimura, Yoshihiro Abiko.
  • 学会等名: 94th IADR
  • 発表場所: Seoul, Korea
  • 年月日: 2016-06-22 – 2016-06-25
  • 国際学会
• [学会発表] High Frequency of DNA Hypermethylation in Lichen Planus. (2016)
  • 著者名/発表者名: Takatoshi Chujo,Bhoj Adhikari, Tetsuro Morikawa, Fumiya Harada, Koki Yoshida, Jun Sato, Michiko Nishimura, Kenichi Matsuzaka, Takashi Inoue, Yoshihiro Abiko.
  • 学会等名: 94th IADR
  • 発表場所: Seoul, Korea
  • 年月日: 2016-06-22 – 2016-06-25
  • 国際学会
• [学会発表] Genome-wide Analysis of DNA Hypermethylation in Epithelial Cells by Arecoline. (2016)
  • 著者名/発表者名: Bhoj Adhikari, Osamu Uehara, Koki Yoshida, Tetsuro Morikawa, Fumiya Harada, Takatoshi Chujo, Rie Takai, Jun Sato, Michiko Nishimura, Yoshihiro Abiko.
  • 学会等名: 94th IADR
  • 発表場所: Seoul, Korea
  • 年月日: 2016-06-22 – 2016-06-25
  • 国際学会