研究課題
歯周炎や慢性関節リウマチなどの炎症性骨疾患では、局所に浸潤したマクロファージから分泌される炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、TNF-αなど)の作用によって破骨細胞前駆細胞から破骨細胞への過剰な分化誘導が促進され、過度の骨吸収が起こる。一方、骨髄由来間葉系幹細胞(MSC)は血行性に全身に運ばれて炎症部位に集積し、組織修復に働くとされている。本研究では、MSCの培養上清中に存在するSCRG1ペプチドが破骨細胞前駆細胞様細胞Raw264.7のRANKL依存性破骨細胞分化を有意に抑制することを見出した。また、興味深いことにMSCから分化誘導された骨芽細胞様細胞ではSCRG1の分泌が抑制され、この効果が認められないことが判明した。MSCが分泌するSCRG1は、我々によって同定された新規受容体BST-1/integrin複合体を介してPI3K/Akt経路を活性化する。しかしながら、Raw264.7細胞におけるSCRG1刺激は主としてERK1/2経路を活性化した。即ち、RANKL依存性破骨細胞分化はERK1/2経路の活性化によって抑制されることが示された。また、歯肉や歯根膜の線維芽細胞あるいはマクロファージから分泌された炎症性サイトカインIL-1β、IL-6ならびにTNF-αが線維芽細胞に作用することで、MSCの遊走促進効果を有するケモカインSDF-1αならびにMCP-1の発現を誘導することを明らかにした。興味深いことに、MSCは線維芽細胞と細胞間接着を形成することで、抗炎症性サイトカインTGF-βとIL-10の発現を増強することを見出した。以上の結果から、線維芽細胞とMSCの相互作用は炎症抑制に重要な役割を担うとともに、MSCから分泌されるSCRG1や各種サイトカインは炎症性骨吸収を抑制することが示唆された。
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