研究課題/領域番号 |
25463225
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
多田 浩之 東北大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (70431632)
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研究分担者 |
清浦 有祐 奥羽大学, 歯学部, 教授 (90194951)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 慢性歯周炎 / Porphyromonas gingivalis / Interleukin-33 / 歯肉上皮細胞 / 慢性アレルギー炎症 |
研究実績の概要 |
慢性歯周炎は、歯周病関連細菌Porphyromonas gingivalisによる感染症であり、歯周組織破壊の原因となる慢性炎症の病態解明は、歯周炎予防における喫緊の課題である。粘膜組織において、上皮細胞は細菌やアレルゲンに対して物理的バリアとして機能するだけではなく、これらの刺激に応答してinterleukin (IL)-33, IL-25およびthymic stromal lymphopoietin (TSLP)などの上皮性サイトカインを放出することで、慢性アレルギー炎症の誘導に関わることが示されている。 前年度の研究成果より、ヒト歯肉上皮細胞をP. gingivalisで刺激すると、IL-33産生が亢進することが示されたことから、本年度は慢性歯周炎患者の歯周組織におけるIL-33発現について検討した。その結果、健常な歯周組織にはIL-33発現がほぼ認められないのに対して、慢性歯周炎患者の歯肉上皮には著明にIL-33発現が発現することが明らかとなった。これまでの研究実績から、P. gingivalisによる同細胞からのIL-33産生にはPAR-2が関わることが示唆されたことから、P. gingivalis-PAR-2の細胞内侵入の関与について各種阻害剤を用いて検討した結果、同菌の細胞内侵入がIL-33産生に必要であることが明らかとなった。加えて、P. gingivalisによる同細胞からのIL-33産生に関わるPAR-2下流のシグナル伝達経路について、PAR-2活性化に伴い細胞膜にリクルートされる分子であるbeta-arrestin-1について検討した。その結果、beta-arrestin-1ノックダウン細胞では、P. gingivalisによる同細胞からのIL-33産生が抑制されることを見出した。 これらの研究成果から、慢性歯周炎の病態形成にIL-33が関与することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度の研究計画に基づき実験を実施した結果、次の研究成果を得た。 ① 慢性歯周炎におけるIL-33発現:P. gingivalisにおけるヒト歯肉上皮細胞におけるIL-33誘導作用が、実際にヒトの慢性歯周炎で同様にみられる可能性について、慢性歯周炎患者の歯周組織におけるIL-33発現について検討した。その結果、健常な歯周組織にはほとんどIL-33発現が認められないのに対して、慢性歯周炎患者の歯肉上皮には著明にIL-33発現が発現することを明らかにした。 ② ヒト歯肉上皮細胞からのIL-33誘導作用におけるP. gingivalisの細胞内侵入:P. gingivalisによるヒト歯肉上皮細胞からのIL-33産生にはPAR-2が関わることから、P. gingivalis-PAR-2の細胞内侵入の関与について検討した。同細胞をmicrotubule阻害剤のnocodazoleならびにparticle internalization阻害剤のcytochalasin Dで前処理後、P. gingivalisを感染させた結果、同細胞からのIL-33産生が有意に抑制されるが明らかとなった。 ③ ヒト歯肉上皮細胞からのIL-33誘導作用におけるbeta-arrestin-1の関与:P. gingivalisによる同細胞からのIL-33産生に関わるPAR-2下流のシグナル伝達経路について、PAR-2活性化に伴い細胞膜にリクルートされる分子であるbeta-arrestin-1について検討した。ヒト歯肉上皮細胞をbeta-arrestin-1 siRNAを用いたRNAi法によりbeta-arrestin-1ノックダウン後、同細胞をP. gingivalisで感染させた結果、同細胞からのIL-33産生が有意に抑制されることを見出した。
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今後の研究の推進方策 |
活性化ビタミンD2ならびにビタミンD3による歯肉上皮細胞からの抗菌ペプチド産生におけるP. gingivalisの影響について検討を行う。また、IL-33による歯肉上皮バリア機能への影響について検討を行う。 以上の研究手法を駆使することで、今後より一層研究の推進を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額は、当初の予測と異なる新たな知見を得たため、同知見を含めた論文作成のため関連する実験の精緻な検討が必要となり、補助事業期間を延長する必要があるため。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額は、ヒト歯肉上皮細胞におけるhCAP-18/LL-37発現誘導に関する実験の遂行に使用する予定である。
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