本研究の目的は、妊娠糖尿病に罹患する妊婦への歯周病の影響を調査することである。アジア人は遺伝的に糖尿病を発症しやすく、また妊婦の高齢化に伴い妊娠糖尿病の発症増加は懸念される。しかしながら、これまでに日本を含むアジア人に関する妊娠糖尿病と歯周病に関する報告はない。 本研究は、昭和大学病院産婦人科、糖尿病内科の協力のもと実施した。申請時の計画では、被験者の選定時期を妊娠16週未満と設定した。しかし、当大学産婦人科妊婦検診システムの変更に伴い、妊娠糖尿病のスクリーニングを実施する妊娠初期および中期の2期に選定時期を変更し実施した。また、当初の計画ではSNPsの解析を実施する予定であったが、現時点では日本人における妊娠糖尿病と歯周病との関連性は明らかではないため、倫理委員会の承認が得られなかった。そのため、SNPsの解析は計画から削除した。歯周病原細菌の感染度を調査する項目として血清抗体価の測定を計画したが、使用する予定だった検査キットの販売が終了し使用できなくなった。そのため、唾液中の歯周病原細菌数をPCR法にて測定することに変更し実施した。 研究協力に同意が得られた16名の妊婦を被験者とした。妊娠初期に妊娠糖尿病と診断された者は6名だった。本研究における『歯周病』の診断基準は、4mm以上のポケットの部位が1か所以上ある、あるいはプロービング時の出血部位が15%以上ある場合とした。その結果、9名の被験者が歯周病と診断された。妊娠期間はすべての被験者が正期産で、早産で出産した者はいなかった。しかし、児の出生時体重が2500g以下の低体重児を出産した者は2名おり、いずれも歯周病と診断された被験者であった。4000gを超える巨大児を出産した者はいなかった。
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