研究課題/領域番号 |
25463229
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
小方 頼昌 日本大学, 松戸歯学部, 教授 (90204065)
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研究分担者 |
中山 洋平 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (30434088)
高井 英樹 日本大学, 松戸歯学部, 助教 (30453898)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歯周炎 / microRNA / 炎症 / 遺伝子発現 / 歯肉 / 結合組織 / 上皮 |
研究実績の概要 |
MicroRNA(miRNA)は、長さ約22塩基の一本鎖ノンコーディングRNAで、標的mRNAの3末端非翻訳領域(3’-UTR)に結合して翻訳抑制を引き起こし、遺伝子発現を調節することで、様々な疾患の発症に関与することが報告されている。我々のグループは、TLR4遺伝子の3’-UTRにある1塩基多型(rs11536889)がmiR-1236とmiR-642aとの結合を介してTLR4の発現量および歯周炎の発症と関連することを報告した(J Biol Chem. 2012, 287; 25163-25172)。このTLR4遺伝子多型rs11536889におけるC/C遺伝子型は、歯周炎等のTRL4活性化を誘因とする炎症性疾患のリスク因子になると予想され、疾患関連遺伝子として診断や新たな治療法の開発に応用される可能性が期待される。 H26年度には、歯周病の発症と進行へのmicroRNAの役割を解明するために、重度慢性歯周炎患者の歯周外科手術時に切除する炎症性歯肉と、インプラント手術時に切除除去する非炎症性歯肉から低分子RNAを含む全RNAを抽出し、miRNA マイクロアレイにてmiRNA発現量の違いを比較検討した。その結果、炎症性歯肉ではmiR-150、miR-223およびmiR-200bの発現量が増加し、歯周炎の発症にこれらのmicroRNAが関与する可能性を示した(J Oral Sci. 2014, 56;253-260)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
中等度~重度慢性歯周炎患者の歯周外科手術時に切除除去する炎症性歯肉(歯肉上皮と歯肉結合組織を含む)と、デンタルインプラント手術時に切除除去する炎症のほとんど無い歯肉から全RNAを抽出し、両者でのmiRNA発現量および質の違いをmiRNAマイクロアレイを使用して比較検討を行った結果、炎症性歯肉で17種類のmiRNAの発現上昇と22種類のmiRNAの減少を同定した。炎症性歯肉ではmiR-150、miR-223およびmiR-200bの発現量の増加が、また、miR-379、miR-199a-5pおよびmiR-214の発現量が最も減少し、歯周炎の発症にこれらのmicroRNAが関与する可能性を示した(J Oral Sci. 2014, 56;253-260)。歯周炎の発症にこれらのmicroRNAが関与する可能性を示すことができた(J Oral Sci. 2014, 56;253-260)。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、歯周組織破壊に関与する炎症性サイトカインまたは遺伝子発現に対するmiRNAの影響を検索するために、上記歯周外科手術時に切除した炎症性歯肉とインプラント手術時に採取した非炎症性歯肉でのmiRNAおよびmiRNA標的遺伝子の発現をリアルタイムPCRで検索し、歯肉でのmiRNAの発現をin situハイブリダイゼーションで、miRNAの標的遺伝子のタンパク質発現を免疫組織化学で検索する。また、ヒト歯肉由来線維芽細胞(HGF)を培養し、炎症性サイトカイン(IL-1、IL-6、TNF-)で刺激、またはmiRNAを細胞内で過剰発現させ、miRNAおよびmiRNA標的遺伝子(転写因子であるMyb、サイトカインシグナリングの阻害剤であるSOCS1およびSOCS7)の発現、I型コラーゲン、TGF-、その他炎症関連遺伝子およびタンパク質の発現を検索し、歯周組織破壊と再生へのmiRNAの関与を解明したいと考える。
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