研究課題/領域番号 |
25463231
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研究機関 | 鶴見大学 |
研究代表者 |
深江 允 鶴見大学, 歯学部, 名誉教授 (40064373)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 歯根膜 / 非コラーゲン性タンパク質 / 破骨細胞 / トランスフォーミング成長因子ベータ |
研究実績の概要 |
今まで、歯周組織の初期破壊は、炎症性刺激で集積してきた好中球から分泌される好中球エラスターゼが、コラーゲン線維間に存在する非コラーゲン性タンパク質(NCP)を分解することで起こることを示した。また、ブタ正常歯根膜のNCPを市販の好中球エラスターゼによる分解実験を行うと、それらのNCPの中で、Stains-all色素陽性のプロテオグリカンと思われる110 kDaの タンパク質が分解されることがわかった。本年度の研究において、このタンパク質がデコリンであることが同定出来た。さらにデコリンを精製し、ヒト歯根膜由来培養細胞(PDL細胞)に添加すると、ALP活性が上昇することを見つけた。この生理活性物質をELISAにて特定したところ、TGF-b1であることがわかり、それがデコリンに結合していることが判明した。さらにTGF-b1はRANKLで刺激したマウスマクロファージ由来のがん細胞株であるRAW264.7細胞を破骨細胞への分化誘導が促進することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
ブタ歯根膜の非コラーゲン性構造タンパク質(NCP)の分離・精製で、歯根膜には血液成分が多量に含まれ、それらのタンパク質が歯根膜NCPの分離を困難にしていることがわかったので、生理的食塩水で丁寧に洗浄し、その後、構造タンパク質でイオン結合していると思われるタンパク群を、高塩濃度溶液で分離し、さらにCaイオンを介して結合していると思われるタンパク群をEDTA溶液で抽出した。 目的の110kDaのタンパク質の収量が少ないように思えたので、さらにアルカリ性溶液を使って抽出することで、確実に目的のタンパク質を他のNCP をあまり含まない状態で抽出分離することができた。 そのタンパク質は免疫科学的にデコリンであることが証明されたが、そのデコリンのコラーゲン線維に対する結合は他のNCPより強固に結合していることが段階的分離法から示唆された。 また、このデコリンを最終的にヘパリンカラムで精製し、このデコリンにはTGF-bが結合していることが判明した。このTGF-bが破骨細胞分化促進に関与していることも明らかになり、好中球エラスターゼにより歯周組織の初期破壊が起こると、デコリンに結合したTGF-bが破骨細胞を誘導し、歯根膜の再生に関与するのではないかと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
すでに分離している歯根膜デコリン画分には、コラーゲン由来と思われる分解産物が依然として含まれるので、さらに各種クロマトグラフィーで精製する。デコリンの分子量が既知であるので、コラーゲンとの分離にはゲル濾過法よりもイオン交換クロマトグラフィー、あるいはアフィニテイークロマトグラフィーが適当と思われる。 またブタ歯根膜組織から好中球エラスターゼを分離精製し、精製したデコリンに対しての分解過程を調べる。本研究では、110kDaのStains-all陽性のタンパク質がデコリンであることを証明したが、今後の研究ではデコリンを最初に分解するのが、炎症組織中にある3種のプロテアーゼのうちの好中球エラスターゼであることを確認する。 さらに本研究ではTGF-bが破骨細胞分化誘導を促進することも分かったので、デコリンTGF-b複合体が歯根膜のNCPの破壊時に組織中に遊離状態になった時に破骨細胞の誘導を含めて、歯根膜細胞にどのように働くのかを調べる。
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