研究課題/領域番号 |
25463235
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
吉田 英子 東北大学, 歯学研究科(研究院), 助教 (40648458)
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研究分担者 |
小関 健由 東北大学, 歯学研究科(研究院), 教授 (80291128)
細川 亮一 東北大学, 歯学研究科(研究院), 講師 (40547254)
小山 重人 東北大学, 大学病院, 准教授 (10225089)
丹田 奈緒子 東北大学, 大学病院, 助教 (00422121)
伊藤 恵美 東北大学, 歯学研究科(研究院), 技術職員 (80596817)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | リハビリテーション / 頭頸部がん / 軟組織 / 創傷治癒 / がん治療 |
研究概要 |
現在の頭頸部がんの術後リハビリテーションの評価については、形態評価と嚥下能力等の機能評価を中心とした基準で実施されている。しかしながら軟組織自体の瘢痕治癒といった生体の変化がどのように口腔リハビリテーションに影響を与えるのかについては、客観的評価法が無い。本研究では、軟組織の機械的性状・機能的評価との関連を検索し、術後の顎義歯の装着時期ならびに、口腔機能リハビリテーションの効果についての形態・機能・組織の統合する客観的評価法の提案を目指した。 (1)口腔内外の計測点の設定と測定基準値の取得:頭頚部がん患者のガン治療後の顎補綴を含むリハビリテーションにて、術後の瘢痕収縮や顎運動の制限の生じた場合に、その程度の評価を行うために、口腔内外に標準計測点を設定し、各年齢の健常者の測定値を集めて測定基準値を決定する。この計測点はこの研究を通して計測し、測定基準値と比較することによって正常域であるかの判断に使用するので、各実験に先だって最初に実施する。これらの各種計測値を決定するために、頭頚部がん患者のガン治療後の頭頚部・口腔内の写真を登録してデータベース化した。この写真から規格化するために被検者毎の相似性を検索し、関連する計測点を絞り込んで代表計測点の候補を得た。 (2)放射線照射治療時の頬部瘢痕治癒の経過観察、および、(3)がん切除根治術実施後の頬部膜瘢痕治癒の経過観察:耳鼻咽喉・頭頸部外科にて放射線療法予定の咽頭がんの患者に対して、放射線照射治療前後の口腔内外の軟組織の炎症発生と瘢痕治癒の過程を検証する。放射線療法の照射野と線量、外科的切除部位等の治療計画から群分けし、定期的な計測から計測値の変化と可動域、口腔機能の回復の変化を記録し、データベースに登録した。本実験の患者では、測定点などを柔軟に再設定すると共に、定点での観測可能な状況を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
軟組織の形態・機能・組織の評価を統合する客観的評価法の提案のために、口腔内外評価用のランドマーク候補を決定した。これらは、頭頚部がん患者のガン根治手術後の形態学的欠損の多様性により、全ての患者で同一定点を使用することが難しく、複数の定点から症性によって測定可能な定点を選び出す方法が適切であると考えられた。これらの情報を収集する過程では、過去と現在の病院外来通院した患者の診療を通して、口腔機能の回復の変化を記録した記述を収集し、開口度や口腔内の乾燥度などの多くの視点からの評価項目を抽出する事ができた。また、医科歯科連携にて頭頚部がんの患者を診療するので、診療した医師と歯科医師から、各診療科診療カンファレンス等を通して各方面の専門的な意見を議論し、収集することができ今後の研究のための人的ネットワークの基盤を形成することができた。現在、病院に通院中の顎口腔外科領域のがん切除根治術を受けた患者では、開口障害が生じやすいので開口訓練などの術後リハビリテーションを実施している。この診療では開口訓練には開口器(かいくん)を用い、訓練中の機能検査や嚥下機能評価等のスコアの関連を考察して、口腔機能リハビリテーションの実施時期に関しても見当を得ることができている。これらの情報から、開口訓練時の運動負荷等の手探りで実施されている運動負荷プログラムを複数パターンに設定する可能性が考えられ、今後の研究の大きな足がかりを得ている。これらの情報を収集したデータベースを基に、今後の研究の方向性を確たるものとした。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究成果を基に、(4)がん治療時における口腔機能リハビリテーション法の提案に向けて以下の実験を継続、もしくは新規に実施する。 (2)放射線照射治療時の頬部瘢痕治癒の経過観察、および、(3)がん切除根治術実施後の頬部膜瘢痕治癒の経過観察に関しては、耳鼻咽喉・頭頸部外科にて放射線療法予定、およびがん根治術を実施予定の頭頚部・咽頭がんの患者に対して、放射線照射治療前後の口腔内外の軟組織の炎症発生と瘢痕治癒の過程を検証する。放射線療法の照射野と線量、外科的切除部位等の治療計画から群分けし、定期的な計測から計測値の変化と可動域、口腔機能の回復の変化を記録し、データベースに登録することを継続する。本実験の患者では、症例に合わせて柔軟に設定された測定点での観測が可能で有り、軟組織の治癒過程を物理学的性状、生理学的機能評価法を合わせて評価してデータベースに規格化して登録することにより、多種な症例に対しても最大限の比較評価を行うこととする。 頭頚部がん・口腔がん根治術にて顎顔面領域に欠損が生じ、失った器官の再建術を必要とする患者に関して、がん切除術後の顎補綴や咬合床・義歯の導入時期は、術者の手指の感覚や経験則に頼って決定しているのが現状である。この実験では、顎義歯の装着時期について、装着前後の口腔粘膜の変化について、特に手術後一年後の瘢痕部の硬さについて検討を行う。顎補綴の開始時期に関して、術者の製作開始判断に関わる数値データを明らかにし、顎補綴によって生活機能がどの様に変化したかをこの実験の評価法を用いて検証する。顎補綴の症例は、年間20症例程度であるので、本研究期間を通して患者データを収集し、研究の最終段階でデータを評価して数値的なリハビリテーション診療ガイドラインを設定する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度の実験では、①口腔内外の計測点の設定と測定基準値の取得の実験の部分において、写真撮影時の記録をSDカードの媒体に記録してそれをハードディスクにて管理する予定であったが、実際にはUSBメモリに記録して管理する方法が利便性が高く、実用的であった。よって、この部分のデータ記録に関する機材の変更が生じた。さらに、平成26年度に実施する研究で、顎口腔外科領域のがん切除根治術を受けた患者で開口訓練の術後リハビリテーションを実施する際には、かいくん等の開口器を使用するが、この準備の為に平成25年度に機器を準備する予定であった。しかしながら、この部分の準備が遅れたことも平成25年に剰余が出た理由である。 平成26年度の研究では、顎口腔外科領域のがん切除根治術を受けた患者で開口訓練の術後リハビリテーションを実施するが、平成25年度に行うべきであった準備が遅れているので、至急に機材等を購入して実験に支障が出ないように準備を行う。それにて、平成25年度の持ち越しの部分は使用されるので、実験計画に大きな変更が無く研究を実施する予定である。
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